ここからページの本文です

実践Webマガジン

桜むすび

<特集>新しい日野と渋谷、未来へむけて 3

社会とつながる教育を目指して

主体性が学生を変え、学生が社会を変える キャリア教育の進化を目指して

産業界のリアルなニーズを学ぶため、
企業からお招きした特任教授のお二人に一年の取り組みをお聞きしました。

画像イメージ渋谷キャンパス担当
深澤晶久特任教授

【深澤】
 私は昨年(2014年)3月まで企業の人事部門で、採用や研修などを担当していました。したがって、企業に起こっている急速な変化や、今会社はどういう人材を求めているのかなど、産業界のリアルな実態をお伝えすることが役割であると認識していました。とりわけ女性に何が期待されているのか、何が課題なのかなど、女性を取り巻く環境変化への対応が女子大生にとっても喫緊のテーマであると考えていました。
【眞鍋】
 私も、直近まで企業の経営に携わっていましたが、最近のデータでも、最初に入社した会社において、3年以内に3割も若手社員が退職するという状況が続いています。長い人生設計や現在の社会環境の視点から考えたとき、本人だけでなく、企業にとっても国にとっても、とても残念なことなのです。自らの意志でキャリアを設計し、社会で生き抜く力を身につけてほしいと思います。
【深澤】
 そこで、2年生の必修科目である「実践キャリアプランニング」や3年生の選択科目である「キャリアデザイン」などの科目においては、グループワークやPBL(課題解決型学習)などアクティブラーニングスタイルの授業形態を多く取り入れ、今まさに社会が求めている〝主体性の醸成〞に努めました。また、卒業生の先輩は勿論のこと、様々な世界で活躍する社会人を招聘し、社会の多様性に触れてもらう機会を増やしました。私が目指す「マルチアプローチ・マルチフィールド型」の授業を目指すところです。
【眞鍋】
 授業後の学生の感想を見ますと、初対面のメンバーとも徐々にチームワークが育まれたようで、大きな達成感を得た学生が多かったというのが印象です。また、プレゼンテーションの内容も学生としての工夫が随所に見られるなど、企業における仕事の疑似体験に繋がったことと思います。

画像イメージ日野キャンパス担当
眞鍋清嗣特任教授

【深澤】
 2014年に新設された「国際理解とキャリア形成」の科目では、前半、世界におけるリージョン毎の政治、経済、女性の働く環境などを学び、後半では、開催の決まった2020年東京オリンピック・パラリンピックを取り上げることにしました。テーマは、「東京オリンピック・パラリンピック、私たち実践女子大生としてどう貢献するか?」これもPBL形式で進めました。ちょうど、「大学連携協定(※)」が締結された直後であり、最終のプレゼンテーションには、組織委員会の方にお越しいただき、フィードバックもいただきました。外部の方にプレゼンをすること、またテレビ取材のクルーがおられる場面など、学生にはまさに社会の一コマを経験する良い機会となりました。今年は、日野と渋谷に加え、金沢の大学とも結んで展開する予定です。
【眞鍋】
 組織委員会の方からは、学生の視点から考えられた内容が多かっただけでなく、とても高いレベルの内容であったとのコメントをいただいたことが印象に残っています。この授業は、昨年、唯一のテレビ会議を活用した授業であり、日野と渋谷の2校地でスタートを切った実践女子大学にとって、今後のカリキュラム展開を考える上でも大切な試みとなりました。
【深澤】
 実践女子大学ではキャリア教育にとても力を入れていると感じます。私の勤めていた企業は、女性社員比率8割の会社。女性が様々なライフイベントを乗り越え、長く働くことは当たり前になりました。そして、これからは、一層女性の活躍が求められる時代になると実感しています。だからこそ、この実践女子大学において、専門科目もしっかり学び、キャリア教育もしっかり身につけ、「自ら選択し、考え、行動してやりきること」の出来る卒業生として誇りをもって社会で活躍して欲しいと思います。そのために、時代のニーズをとらえたキャリア教育の深化を目指していきたいと考え
ています。
【眞鍋】
 私が長年勤めていた企業では、最近出産を理由に辞める女性社員はほとんどいなくなりました。今、多くの大企業では、子育てをしながら働くことを前提とした仕組みづくりが、従来に比べ大変なスピードで進んでいると感じます。また近く120周年を迎える実践女子大学には様々な価値観や環境の中で活躍されている多くの諸先輩がおられると思います。女性の活躍が強く求められるこの時代、諸先輩のご協力も仰ぎながら、大学生との接点を増やし、共に今の時代を考え、語り合えれば、大学生のキャリア形成に大いに役立つものと考えています。

※実践女子大学は2014年6月23日に2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け組織委員会と大学連携協定を締結しました。

画像イメージ

「国際理解とキャリア形成」を受講して

 私たち学生が主体的に行動できるようになった中での最後の課題が「オリンピック連携講座」でした「。チャレンジすること「」脳に汗をかくほど考えること「」修羅場にあえて身を置くこと」など、社会に出るために必要な心持ちを実行する機会だと思いました。苦労した点は、チームでひとつのものを作ることです。人の意見やアイデアを引き出すこと、多様な価値を新たな価値に昇華することを学びました。今後は、グループワークで感じた可能性をもっと活かしたいと思います。また、実際のオリンピック・パラリンピックはもちろん、その後も、この授業が実践のレガシーになれば素敵だなと思いました。
(文学部美学美術史学科2年)

企業連携プロジェクト型授業「実践プロジェクト」

 「実践プロジェクト」は、企業と連携して行うプロジェクト型の授業で、1年生で学んだ「情報リテラシー基礎」で身につけた情報の収集・分析・発信などの基礎力を試す演習の場でもあります。企業側から出される課題に対し、学生がチームに分かれて取り組み、まとめあげたソリューションを企業にプレゼンテーションします。2014年はリコージャパン株式会社の協力のもと、「コミュニケーションの課題」を探るために社員
へのインタビュー等を通して調査・分析を実施。社員のパフォーマンスを上げるコミュニケーション・サイクルを提案しました。そのソリューションアプローチとして、チロルチョコのパッケージ、利用シーンをデザイン。さらに、福岡女学院大学とのコンペティションという初の試みをとりました。

画像イメージ人間社会学部
人間社会学科
准教授 松下慶太

情報教育で、発信する力を

 「実践プロジェクト」は情報教育の一環で、2014年に新設した応用編です。今までは、PC操作スキルの向上が中心でした。もちろん、それも重要ですが、それを使って何をするか、どう発信するかが弱かったんです。また、私自身、アクティブラーニングの先進国であるフィンランドに留学したのですが、あちらではさまざまな学部の学生がチームを作り企業や政府などの課題に取り組むプロジェクトが盛んで、良いアイデアは買ってもらったりしているんです。実践女子大学でもいずれは、企業に買ってもらえるようなアイデアが提案できれば良いと思っています。

企業が抱える本物

 15コマのうち、始めはコラボレーションの基本として5〜6人で会話をし、考えをまとめるというトレーニングを経て、徐々に具体性を増していきました。今回はリコージャパン株式会社の課題である「社員のパフォーマンスを上げるためのコミュニケーション・サイクル」に取り組んだわけですが、企業が本当に困っている課題でなければ解決策を審査できないため、課題選定にあたっても深く吟味しました。実際にリコージャパン株式会社を訪問し、社員へのインタビューやアンケートの回答を通して調査・分析もしています。

福岡女学院大学との競争

 学生の方も初めは戸惑いもありましたが、出席するだけではダメだと分かると、参加したり、アイデアを出すようになりました。また、質問も当初は「これでいいですか?」と合格ラインを聞いてきましたが、だんだんとそういうものではないこと、クオリティを上げなければ自分が恥ずかしいということに気づいていったようです。さらに一番の刺激は、学年がひとつ上の福岡女学院大学のチームと競い合い、そこに序列がつけられる点だったかもしれません。やりきったチームは自信を持って発表しますし、3年生の先輩達の発表を見て自分達の至らなさを痛感するチームもありました。

コンセプトを持った案

 最終発表会に進んだチーム「ぱずるぴーす」は、シチュエーションに応じて、聞きたいことがある・怒っているといったチロルチョコのパッケージを、パズルのように組み合わせて出してコミュニケーションをとるといった案でした。プレゼンテーションではシチュエーションを仮定した劇を演じていて、それもわかりやすかったですね。メディアをうまく使った提案だったと思います。チーム名にも自分たちの提案の骨子を込めていて、チームで「コンセプト」を持てていたのだと思います。

摩擦が良いアイデアを産む

画像イメージ福岡で行われた最終発表会での集合写真

 最終発表会の出場権を獲得したチーム「ぱずるぴーす」と「チームS」には、案をまとめる過程で「摩擦」もありました。これは大切なことで、みんながいいねという案は、外から見ると意外につまらない案なんです。チロルチョコを面白く捉え、相手に刺さるように磨き合ってこそ、提案のクオリティは上がります。同様に、実践女子大学の提案が、企業にとって「自社の社員でも出せる」案ではまだまだです。グループワークの課題でもあるんですが、批判や意見の違いを恐れずに話し合い、案のどこが良いのか、どうしたら伝わるか、全員がしっかり把握してプレゼンテーションできるようになるといいですね。次回はさらなる「摩擦」を生み出してくれることに期待しています