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実践Webマガジン

桜むすび

<特集>進化する 学び②-中高感性表現手法育成のための学習プログラム

 豊かな感性を育むことにより、変化の激しい社会でも主体的に生き抜ける優れた判断力、コミュニケーション能力を持った女性の育成をめざします。

実践で学ぶ誇りと、心で伝える伝統 120周年記念を見据えた「音楽劇」をめざして

 関登美子先生が設けられた新たな学びの場は、体育・音楽・家庭・国語などの教科を横断した、「心を育てる教育」。
指導には、本学園卒業生であり元宝塚歌劇団の初風緑さんにも研究講師として参加いただいています。

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関 登美子教諭

 研究代表者として、研究主題「感性表現手法育成のための学習プログラムの開発」を申請。実践女子学園中学校高等学校が東京私学教育研究所の研究協力学校に選ばれました。

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初風 緑さん

 元タカラジェンヌ、男役スター。実践女子学園高等学校卒業後、宝塚音楽学校に入学。2 0 0 6 年より女優活動のかたわら、宝塚歌劇団やミュージカル女優志望者のためのスタジオを開校。

下田歌子先生も推奨した感性表現教育

 この学習プログラムを計画したのは、実践女子学園で学ぶ誇りや、「つないでいくバトン」を創っていきたいと考えたからです。また、感性表現の指導分野においては、既に合唱部やダンス部で大変お世話になっている初風緑さんにご協力をお願いしました。この学習プログラムの申請では、「外部研究指導者」が1名必要ですので、まさに適任でした。

初風 私は、卒業式を拝見したときに、「つなぐバトン」が薄いのではと感じてしまいました。宝塚音楽学校の入学式では、上級生から校章を付けてもらう儀式があります。これは儀式であると共に、心をつなぐバトンで、先輩から後輩へ、さらに後輩へ、自覚や誇り、覚悟、責任、優しさなど、「心」が継がれています。

 本学園にも、受け継がれているものはなんとなくあります。しかし、少し薄らいできているのかもしれません。

初風 例えば挨拶の仕方、通路の歩き方、掃除の仕方など、身につけて損をするものはありません。これらが先輩から後輩へ自然に受け継がれ、その中で目上の方を敬う心、後で使う人への配慮、美しく整えて心地よく過ごす知恵が育っていけば良いと思います。

 その教育は、教科ではない、まさに『心の教育』です。人と人とのつながりから生まれる感性表現は、心の成長なしにはできません。下田歌子先生の掲げた「品格高雅」の出発点ではないかと思います。

朗読劇で芽生えた発表の自覚

初風 朗読劇では下田歌子先生の『女子の修養』を題材としました。ただ、どこを読むかは、生徒が読みたいところを自ら選ぶようにしました。その結果、「第一章 少女の心得〔四〕仁恕の心(思いやりの心)、〔十二〕女子教育の趣旨(女性が教育を受ける意味)」「第十一章 女子と職業と〔一〕女子に職業を執らしむる可否(女子が職業に就くことについて)」が選ばれました。生徒たちにはまだ難しかったのか、等身大のところを選ぶ傾向があったのかもしれません。それでも、どこを読むかより、どこを自分で選ぶかという方を重視しました。読ませられるのではなく、自ら選び、読む、その意志が大切なんです。

 生徒たちも、発表する自覚が持てたようですね。

初風 部屋への入り方、お辞儀の仕方、本の持ち方、ページのめくり方、声の出し方や読み方など、ひとつひとつ指導しました。人前での表現である以上、品格があり、心地良い表現であるべきです。日常の何気ない動作も同様です。体だけでなく、心も、また衣装のラインまでも揃うように練習を重ねます。そのためには、全員が舞台上のすべてのもの(人・物)の動きに互いに気を配り、高いレベルで息を合わせなくてはなりません。そこまで出来て初めて、お客様も特別感をもって、観たい聴きたいと思ってくださるようになるのです。

 生徒たちも、発表する自覚が芽生えてくると、軽はずみには読めないな、と重みや責任を持てたようです。ですから、立ち居振る舞いが自然と丁寧で心がこもった品格あるものになります。下田歌子先生のおっしゃる「品格高雅」とは、このような何気ない所作に表れる姿のことを指しているのではないでしょうか。そこには必ず、相手を大切に思う心があるということです。「品格」はすぐに身につけられるものではありませんが、中学生高校生というこの大切な時期こそ、触れてほしいと思います。

下田歌子先生の想いが継がれる学園を

画像イメージ中高のプレゼンテーションピットにて初のツーショット

初風 これからの時代、女性のキャリアはもちろん必要だと思います。しかし、下田先生はそれ以前に『人として、女性として、どうあるべきか』を忘れないように、と説いていらっしゃると思います。この実践女子学園には、下田先生の想いが息づいています。下田先生のご出身地である恵那を訪問した時、岩邑小・中学校の子どもたちの素敵な挨拶が印象的でした。この岩村の地には下田先生の想いが継がれているのだと感じました。

 『女子の修養』に、「礼」について「心の整えと形の整えがある」と書かれています。私は、心の整えとは何かを実感できる場を創りたいと考えています。目指しているのは来年2月に行う音楽劇「下田歌子先生物語」の発表。表現を通して、相手に伝え、理解し合うときにいかに心が大切かを全身で覚えられるようにと思います。

初風 まだ手探りの段階ではありますが、いつの時代にも必要とされる『真の心』。これを追求するための学習プログラムの開発が実践女子学園の発展的未来に繋がると信じています。

感性表現手法育成のための学習プログラム

ダンス・礼・歩き方など、人に見られることを意識した所作についてワークショップを行いました。科目の枠を超えた「学び」です。

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ダンスのワークショップ。指先、爪先まで神経を集中させ、表情や視線で「魅せる」ことを体験。(2015年8月)

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模擬卒業証書授与のワークショップ。入場から歩き方、礼の仕方、退場までのすべての動作を美しく。(2015年3月)

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整列歩行のワークショップ。姿勢を正し、全員が全員の動きに気を配り合う感覚を体験。(2015年3月)

初風 緑さんが講師を務めたワークショップにて

画像イメージ卒業生としての思いを語る初風さん

画像イメージ宝塚音楽学校時代の掃除の仕方を説明

 2016年2月8日に行われたワークショップでは、初風さんが宝塚音楽学校時代の体験談を披露。宝塚音楽学校では、生徒自身が早朝から長時間かけて掃除を行うことが日課だったそうです。初風さんは、当時付けていたノートをプロジェクターで映しながら、どのように掃除を行っていたかを解説。掃除の仕方は先輩から細かく指導されていたこと、先輩から教えてもらう動作ひとつひとつに意味があったことを語られました。

 また、一人一人が実践の生徒であるという意識を持つこと、伝統と信頼を受け継いでいく大切さを説かれました。下田先生の著書である『女子の修養』第1章「少女の心得」から共感できること、自分の思うことを生徒から聴収し、生徒の思いや感じたことを取り入れ、現代にあった音楽劇にすることを目指しているそうです。中でも卒業式・入学式のシーンは重要で、「所作の美しさを全校生徒が見て、伝統を感じてもらえたら」と初風さん。

下田歌子先生著『女子の修養』

 明治時代、下田歌子先生が学習院の初代女子部長を務めたとき、女生徒たちのために書かれたものです。
品格をもった女性となるための基本がわかりやすく書かれています。

画像イメージ女子の修養(現代語訳版)

画像イメージ女子の修養(復刻版)

生徒の感想

◆下田先生の考えておられる女性のあり方について深く学ぶきっかけになりました。朗読劇を機会に、人前で読むための礼儀作法、情景を想像できる朗読、聞き取りやすい声を出すための方法などの表現を高める技術を学んだ活動でした。〈高校1年〉

◆道徳の授業で下田歌子先生の人柄・生涯・理念を知りました。そこで初めて、この本は私たちに女性のあり方を伝えるために書かれた本なのだと思い、自分を見直すことができました。〈中学校1年〉