卒業研究要旨(2009年度)

物と行動からみる自室空間に関する研究

2009年度卒業研究 空間デザイン研究室 内海朋子

1.はじめに

 私たちの生活拠点となっている家の中でも、さらに他人の目が入りにくい自室というプライベート空間が存在する。そこで、物と行動がどのように部屋に反映されているのかを調査する。

2.調査方法

 ひとり暮らし7人・実家暮らし6人の女子大生13人を対象に、自室に実際に訪問した上で観察・ヒアリング調査を行う。

3.物から見る部屋の特徴

 行動して使う物を行為対象、視覚のみで楽しむ物を鑑賞対象とし、更に使用頻度が高く意識されて置かれている物を積極的、本人が意図してない物を消極的とし、次の4つに分類を行った。
 A.積極的行為対象(例:化粧品)
 B.消極的行為対象(例:以前使っていた教科書)
 C.積極的鑑賞対象(例:好きなアーティストのグッズ)
 D.消極的鑑賞対象(例:昔買ってもらったぬいぐるみ)

この分類に従い個人の部屋にある物を集計した(図1)。 事例1:A の値が高く,他の値は少ないことから、生活面で活用される必需品が多くあり、生活要素が濃い。
事例2:A の値が1人暮らしにも関わらず事例2は低い。更に、C の値が平均値よりも高い事から生活要素を抑え、自身で工夫しながら部屋を飾っていることが窺える。
事例3・4:両事例とも、消極的要素の量が多く、部屋には使わない物が多いという共通点がある。特に、事例3は D の値が目立ち、ただ物が放置されているというよりも、人からの貰い物や継続的な思い入れがある為に、処理したくても処理出来ずにいる様子が表れている。

4.行動から見る部屋の特徴

 自室において1番長く滞在し、中心となっている場所を第1拠点とし、拠点のつくられ方から部屋のタイプを表したものが表1である。
 移動型は1ヶ所に留まるというよりも行動ごとに場所を切り替え、部屋全体を活用している。
 集中型は第1拠点に物を持ってきてそこで全てをこなす為、手の届く範囲に自分が取りやすいように物を置くようにしており、自分なりのこだわりが1番強いのは集中型と言える。
 併用型と外部型は自室以外に拠点が存在する点で共通するが、併用型は自室の滞在時間も長く、自分がいる拠点付近では自分の好きな事が出来るように物を揃え、空間づくりを意識している。一方、外部型は自室に対しての関心は低く、散らかっていなければいいといった支障がない程度の意識であることに点に差がみられた。

5.まとめ

 一見汚く見える物に溢れた空間でも、その人にとっては意味のある考慮されたものなのかもしれない。

(図1)自室内の物を分類し比較した例
(表1)行動拠点からみた自室形成
 1.移動型:目的に合わせて場所を移動し、第1拠点を中心に部屋全体を活用する。数カ所にわたり移動するので、その場その場で物が広がりやすい。
 2.集中型:第1拠点でほとんどの行為が行われ、部屋の活用度は移動型同様高い。拠点の付近によく使用する物が集められ、居心地を強く意識した配置になっている。ひとり暮らしによく見られる。
 3.併用型:部屋の一部のみを使用し、リビング等の他室と併用して自室を使用している。一定の場所のみ使用し、その他の場所はそのまま放置されている。実家暮らしに多くみられる。
 4.外部型:自室以外に滞在する時間が長く、自室の活用度はどの型よりも低い。自分のものこそ多いが、使用しないのでほとんどが収納されており、見た目はシンプル。



2003-2010, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2010-01-25更新