卒業研究要旨(2016年度)

シングルの街 〜私たちは一人じゃない〜

2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 杉山博美

1.はじめに

 現在、高齢化・晩婚化・単身者(学生・社会人・単身赴任者)・シングルマザー=”シングル”が増加し、シングル暮らしが増加している。それに伴い、シングルをターゲットにした事業(コンビニ・一人鍋・一人カラオケetc)が増え、シングルでも生活しやすい社会になってきた。しかし、住まいはどうだろうか。単調なハコを並べたマンション・地域交流の希薄さ・心の拠り所のなさからくる寂しさは昔と変わってない。むしろ、現代のほうが減っているように感じる。以上のことから、シングル暮らしの新しい住み方、シングル同士が集まって住む新たな街の提案をし、この街から、シングルが抱える問題や不安を解決していく。

2.対象敷地概要

対象地:東京都国分寺市光町(鉄道総合研究所の社宅)
対象面積:13,280m2
 老朽化した7棟の社宅が並ぶ団地があり、空家が目立つ。通勤時・帰宅時以外は閑散としており、近隣住民や鉄道総合研究所の会社員以外はほとんど訪れない。年に数回、鉄道総合技術研究所主催の祭りがあり、子連れの親子で賑わう。

3.設計計画

3−1 コンセプト

 シングルが抱える問題や想いを互いに共有し、解決していくことができる街、昔の近所付き合いのような、多世代との交流が永続的に続く街を目指す。シングルの街から、人と人、地域との関わりが生まれるきっかけになるこれからの時代に必要な存在となる。

3−2デザイン

 シングルが抱える外へ吐き出したいのに吐き出せない気持ちや思いをアメーバの形にした。シングルの街に関わることで、除々に外へと発信していく流れを床・屋根で表現している。歩くたびに変わる景色や数種類あるたまりを発見しながら、散歩できる公園の機能を持つ。

3−3 システム

○6~17人を基本としてマチが形成される。その中で、リビング・風呂・トイレ・生活用品を共有し、シングルで暮らしながら、家族のような関係を保ちつつ生活していく。
○個人部屋+見世(自己を表現する部屋)=イエを一人ひとり所有し、個人部屋は3種類から選べる。また
○DIY可の部屋で個性を最大限に外へ発信する役割を果たす。自由に訪れることができるが、見世と個人部屋を上下に分けること、高さ・角度の変化によって、内と外の境界線を自然に分けている。

3−4 関わり

 シングルの街では、住人に限らず、誰でも利用できるため、常に人の気配を感じることができる。
○短期間住む人:この街に何らかの縁があって訪れ、1日や短期間住む人やプレシングル暮らしを体験できる。この人たちによって、SNSや口コミでシングルの街の存在が外へと発信され、知ってもらうきっかけになる。
○住まない人:共有場またはレンタルゾーンの一室を借りている。より豊かな繋がりや新しいライフスタイルを求め、この街を定期的に利用する。(週2,3回)
○訪れる人:共有場・見世の利用やイベント参加で訪れる。(月2,3回)

4.まとめ

 それぞれのシングルが違う目的でシングルの街を利用することにより、今までにはない交友関係を構築することができる。シングルが多くなった今こそ一人が集まって住むことで支え合い、協力しながら生活していける街が現在、必要とされているのではないだろうか。問題視されている、引きこもり・孤独死がシングルの街の存在で減少するのではないか。

(図1)対象敷地
(図2)イメージ図 個人部屋+見世

→卒業制作紹介

2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新