卒業研究要旨(2016年度)

もりおか まち ものがたり

2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 綱木阿礼

1.はじめに

 盛岡の街は古い建物を活用し、新たな息を吹き込むことを大切にしてきた。新しさと昔懐かしい景観がうまく混じり合い、暮らし手にその歴史を語りかける。以前のバスセンター内で見受けられた、この場所にしかし今ある街の魅力を市内外に発信していく力は弱いと感じる。その原因には、市民自身がその魅力に気づくことができていないことにあると考える。

 盛岡バスセンターという場所で、バスの発着拠点の機能、また建物が街に対する表情を残したまま、バスが巡る、人が巡る、情報が巡る。街の中の情報図書館として賑わいある場所となることを目指す。

2.敷地概要

対象敷地:岩手県盛岡市中ノ橋
敷地面積:盛岡バスセンター+隣接駐車場 約4900m2
バスセンター概要:鉄筋コンクリート3階建て
建物規模:約591m2

(1)盛岡バスセンターの状況

 1960年に開業し、約60年の歴史を持つ。解体反対の声も虚しく現在は解体され更地となっている。昨年9月の営業最終期は1日平均乗客数約2000人、発着便数は253便である。

(2)周辺状況

 盛岡市中心市街地に位置し、都市機能と城下町の街並みが並んでいる。古い商店街や城跡公園、保育園から高校までの教育機関も充実し、お年寄りから子どもまでこの周辺を利用し、賑わいのある地域である。

3.計画

(1)目的

「情報が見え、街の魅力に気づく」
 市内外に巡るバスが集めた情報を集積し、バスセンターで更新していく。この場所で、街に対して新たな発見や気づきを得ることができ、その地を知る、訪れるきっかけになる。

「自分で居られる居場所」
 バスの利用者だけでなく、地域の人がこの場所にフラッと訪れ、思い思いに過ごすことの出来る居場所。以前のバスセンター内で見受けられた、「この場所に行くと誰かがいる」という他者との繋がりを感じられ、コミュニティーが生まれる空間をつくる。

(2)コンセプト

「今が更新されていく場所」
 ここに来れば、何か新しい情報が得られる。耳寄りな話が聞ける。目に情報が飛び込んでくる。バスに乗せた情報が、人を介してリアルタイムで更新していく。目的を持った人でも、持っていない人でも、この場所に訪れ、街の新しさに触れられる。ここでいう情報とは、メディアで取り上げられる大きな話題性を持つものだけでなく、地域の人々の目線で見た街の様子、流行、世間話、生活の知恵など、より生活に密接したものである。

(3)以前の建物の利用方法

・道路に面する外観は既存のまま利用し、まちの顔として存在させる。広場に面したL字面はガラス張りにし広場と建物を繋ぎひとつの囲まれた空間として一体感を持たせる。

・以前のバスセンターでは使用されていなかった2階、3階部分に吹き抜けを作り、薄暗かったイメージを開放感あふれるものとする。

(4)ランドスケープ計画

・どこにでも座れ、どこでも居場所にできるように使い方を特定させすぎないものとする。・一人で過ごしたいとき、大勢の人の賑わいの中にいたいとき、人とコミュニケーションをとりたいときなど、様々な個人のシーンに合わせて居場所を設定し、その中でも情報に触れながら思い思いの時間を過ごす。

・広場に点在する二階の高さのデッキスペースを橋でつなぎ、二階レベルで建物と広場を一周でき、様々な視点から敷地を見渡すことができる。

(図1)盛岡バスセンター
(図2)イメージ

→卒業制作紹介

2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新