卒業研究要旨(2020年度)

段差の寮 〜段差でつながる新たな居場所〜

2020年度卒業研究 空間デザイン研究室 名取希衣

1.はじめに

 実践女子大学日野キャンパスには、生活科学部がある。生活科学部では、各分野の専門的な知識と技術を実験、実習、演習を通して身に付け、実践的な教育を行っている。
 学生たちの大学内の過ごし方を見ると、授業を受けに来て、そのまま帰る人が多い。授業の空き時間では、桜ホールや図書館などの限られた場所で過ごす人が多い。これらのことから、大学内に居場所が少ないと感じる。また、居場所が少ないから学生同士、学生と教職員らが授業以外で関わり合うきっかけがないのではないかと考える。
 そこで、大学敷地内に学生寮を取り入れる。パブリックである大学とプライベートである日常生活を共有する環境を生かし、授業だけでは得られないことを学び合う場、寮生と通学生ともに居場所がある場を大学内に作り出す。また、地域を巻き込み、大学と地域のつながりを生む場も作り、大学と地域の活性化を目指す。

2.対象敷地

実践女子大学日野キャンパス
第4館、第5館、第6館の敷地4,104m2
現在ある第4館、第5館、第6館の教室や研究室、実習室などは本館や第3館などに移転させる。

3.設計概要

学生寮、学びの場、広場、シェアキッチン、サークル活動の場
学生寮の定員:68人

寮生:実践女子大学の学生

4.設計コンセプト

「段差で作り出す、学生の居場所」
 学生の居場所を段差の高低差で作る。様々な段差だけで空間を作り出すことで、壁で仕切られない、緩やかなつながりを生み出す。閉鎖的な空間では、周囲の様子が分からず居づらさを感じることが多いが、段差の緩やかな仕切りによって人の動きや気配、物音などを感じさせる。そうすると、色々な方向へ目が向き、学生が好奇心を抱く場となる。

5.制作イメージ

(1)学生寮の部屋は、4人1組とし、主に寝るだけの部屋。段を重ねてできた隙間は棚になる。段で仕切られていることで、視線は気にならず、物音で相手との距離は近く感じられる。

(2)新しい学びの場は、壁で空間を仕切った従来の「教室」とせず、新たな「学びの場」をつくる。段差が机となり椅子となる。受け身の授業でなく、学生の考えを発言しやすい場にする。


(3)広場は、現在の第4館前の広場を少し広げ、第3館前の広場からのつながりを意識したデザインを行う。その広場では、サークル活動を中心とし、人が滞留できる場にする。日野キャンパスで活動しているサークルは音楽系が多いので、日頃から音を外へ向け、音楽の交流を促す。また、地域の人と一緒に音楽活動をしたり、ミニコンサートを開いたりして、地域の人の活動場所として開放する。

(図1)対象敷地
(図2)学生寮の部屋の模型



2003-2021, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-01-23更新