卒業研究要旨(2021年度)

WAGAYA 〜自ら選択し、楽しみ、生き生きと暮らせる施設〜

2021年度卒業研究 空間デザイン研究室 木根渕紗江

1.はじめに

 アルツハイマー型認知症を患っていた祖母の影響から、幼い頃から施設というものに触れ、関心を持ってきた。施設で過ごす祖母の姿を見ていて、「これが本当に祖母の望んでいる生活なのだろうか。」と何度も疑問に思った。最後は特別養護老人ホームに入り、寝たきりの状態で、ただただ施設の1日の流れに身を任せるような生活を送っていた。祖母が入っていた施設は設備も整っており、個室があり、職員の方も優しい方々だったが、本当の意味で「快適な施設」であったのだろうか。そう考えているうちに、祖母が本当に求めていた施設、空間、暮らし方を考えてみたいと思った。

2.対象敷地

対象地:東京都立川市緑町4-2 緑町公園
敷地面積:約1900㎡


JR立川駅から徒歩約10分のところに位置する公園である。周辺にはグリーンスプリングスやIKEA、昭和記念公園などがある。多くの人が行き交う場所を選ぶことで、地域との繋がりを持たせ、高齢者に刺激を受けてほしいと考え、この敷地を選んだ。

3.設計概要

建築面積:1,169㎡

延床面積:4,373㎡

施設種別:高齢者居住施設(対象者:要介護1〜5)
併設:店舗、図書スペース

地上5階建 個室34部屋

4.設計コンセプト

『高齢者が自ら選択し、楽しく、生き生きと暮らせる施設』

 高齢者に様々な選択肢を与え、入居前の生活に少しでも近づけられるようにすることにより、第二の我が家のように感じられる場所となる。

5.設計イメージ

1)住宅の設備を整えた個室

 
個室を1つの住宅と考え、ダイニングキッチンやトイレ、浴室を備え、入居者それぞれが自由に使えるようにしたいと考えた。また、家族が気軽に泊まりに来れるよう、部屋全体を広めに設計した。

2)四季を感じられる個室

 各部屋にテラスを設け、そこから中庭や外の様子を眺められるようにし、変化や刺激を感じながら暮らして欲しいと考えた。またこのテラスもそれぞれが自由に使い、それぞれの個性が外観にも表れるようにと考えた。

3)地域とのつながり


 1階部分は店舗や図書スペースなどの地域に開くスペースとした。地域の人も、入居者も使えるようにし、そこで交流が生まれることを期待している。

4)セミパブリック空間

 廊下を広めにし、そこに入居者の趣味の物やお気に入りの物が置かれたりして、個性と生活感が出ることを期待している。

毎日同じ生活を送るのではなく、今日は部屋で1人でご飯を食べたい、今日は1階にあるカフェに行きたい、今日は図書スペースで本を読みたい、などその日にやりたいことをできる限り尊重する。春は中庭でお花見、夏には地域の人も呼んで花火、秋は紅葉を見て、冬にはクリスマスの飾り付けをする。日々季節の変化や刺激を感じながら、我が家の様に暮らす。

(図1)敷地周辺の地図 (図2)全体模型



2003-2022, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-02-09更新