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生活環境を知るための文献

私が薦める一冊の本

富田玲子
小さな建築
みすず書房、2007

 「・・・この本は建築の専門外の人たちに、街のこと、家のことを、食べることやお洒落することと同じように考えてほしいと思って、まとめたつもりだ。読んで、考え、感じるところがあれば、話しの輪をさらに広げていただきたい。今よりも住みやすい街にするために。」

 「あとがき」の最後にかかれているこの文章がこの本をよくあらわしています。
 著者は、東京大学工学部建築学科初めての女子学生で、丹下健三研究室で学び、師の丹下健三とともにケヴィン・リンチ著の「都市のイメージ」を訳し、その後吉阪隆正のもとで建築設計・都市計画を実践した後、「象設計集団」を設立し、現在もばりばりと活躍している建築家で、筆者の高校の先輩でもあります。
 筆者が携わったあるプロジェクトで、設計者と利用者という関係で計画段階のワークショップで数多くの議論をしたことがあります。建築家としての多彩な経験とともに、地域に根付いた、生活にもとづいた的確な指摘は、計画を進めるにあたって大いに参考になりました。

 その彼女の考え方の基本的なこと、背景がこの本から読み取れます。建築論としてはもちろん、女性の生き方という観点からも一読を薦めます。(N. T.)