生活環境を知るための文献
私が薦める一冊の本
日本建築学会編
まちの居場所 ーまちの居場所をみつける／つくる
東洋書店、2010
自分の「居場所」というと、どのような場所を想像するでしょうか。自分の部屋とか自宅のリビング。学校や職場の自分の座席。自分の慣れ親しんだ、安心して居られる場所。あるいは、そうした物理的に存在する場所だけでなく、仲のいい友達などとの人間関係に「居場所」を感じることもありそうです。人によっては、空間として占有できる場所を持っていても、何となく「居場所がない」と感じることもあるかもしれません。「居場所」とはただ単に、自分の好きな居心地のいい場所というだけでなく、自分とその場所との心理的な深いつながりや、人との関わり、社会との関わりなども含めて捉えられる、私たちにとって重要な場所であるように思います。
それでは、自分の住んでいる、自分の通っているまちの中に「居場所」がある、と感じている人はどれくらいいるでしょうか。まちの中にはどんどん、オシャレなお店やきれいにデザインされた広場、何でも揃う商業施設やピカピカの公共施設など、便利で快適な場所は増えています。一昔前に比べるとおそらく、私たちの生活はきわめて便利で快適になっていることは間違いありません。でも、そこが自分の「居場所」と思えるような場所は、まちの中に果たして増えているのでしょうか。
本書では、まちなかに存在する「居場所」の実例を数多く紹介しています。それらは「私的な場所でもなく、形式的な場所でもなく、人が思い思いに居合わせられる場所、そして、新たに地縁を結び直す場所。」いろいろな事例に目を通すうちに、こんな場所があったらちょっと行ってみたいな、とか、自分の住むまちもあればちょっと楽しくなりそうだな、と思える例を見つけられるでしょう。自分でもまちの中に「居場所」を見つけてみようと思うきっかけになるかもしれません。
また本書は、「まちの居場所」の意味や役割について、さまざまな視点から解説されています。自分の住むまちを異なる視点で見直してみようという人に、建築やまちづくりを専門的に勉強しようと考えている人に、そして自分でも居場所を実践してみたいと思う人に、幅広くお薦めの本と言えます。（H. T.）
- 槙究教授のお薦め「D.A.ノーマン／誰のためのデザイン？」
- 塚原肇教授のお薦め「水戸岡鋭治／ぼくは「つばめ」のデザイナー」
- 橘弘志准教授のお薦め「赤瀬川原平／我輩は施主である」
- 鎌田佳伸教授のお薦め「平井東幸編／図解 繊維がわかる本」
- 佐藤健准教授のお薦め「飯倉晴武／日本人のしきたり」
- 高部啓子教授のお薦め「森南海子／手縫いのこころ」
- 城島栄一郎教授のお薦め「日本化学会化学教育協議会／「化学」入門編」
- 山崎和彦教授のお薦め「S.J.グールド／フラミンゴの微笑」
- 高田典夫教授のお薦め「松山巌／建築はほほえむ」
- 牛腸ヒロミ教授のお薦め「池谷昭三／天然染料と出会いましょう」
- 槙究教授のお薦め「安野光雅／空想工房」
- 塚原肇教授のお薦め「村上龍／13歳のハローワーク」
- 橘弘志准教授のお薦め「中村好文／住宅巡礼」
- 鎌田佳伸教授のお薦め「佐伯平二＋長崎訓子／環境が分かる絵本」
- 佐藤健准教授のお薦め「市川宏雄／文化としての都市空間」
- 城島栄一郎教授のお薦め「齋藤勝裕／マンガでわかる有機化学」
- 山崎和彦教授のお薦め「E.ケストナー／飛ぶ教室」
- 高田典夫教授のお薦め「富田玲子／小さな建築」
- 牛腸ヒロミ教授のお薦め「徳井淑子／図説ヨーロッパ服飾史」
- 槙究教授のお薦め「芦原義信／街並みの美学、続・街並みの美学」
- 塚原肇教授のお薦め「JIDA編／プロダクトデザイン」
- 橘弘志准教授のお薦め「日本建築学会編／まちの居場所」
- 川上梅教授のお薦め「A.C.サムリ／国際的消費者行動論」
- 佐藤健准教授のお薦め「鈴木孝幸／ecoテクノロジーへの挑戦」
- 城島栄一郎教授のお薦め「松本卓／格好よかった昭和」
- 山崎和彦教授のお薦め「国立天文台編／理科年表」
- 高田典夫教授のお薦め「山崎亮／コミュニティデザイン」
- 牛腸ヒロミ教授のお薦め「大矢勝／石けん・洗剤ものしり事典」
- 槙究教授のお薦め「吉祥寺スタイル、タウンウォッチング」
- 塚原肇教授のお薦め「柏木博ほか／ロングセラー・デザイン」
- 橘弘志教授のお薦め「坂本光司／日本でいちばん大切にしたい会社」
- 川上梅教授のお薦め「電通総研ほか編／世界主要国価値観データブック」
- 佐藤健准教授のお薦め「清家剛ほか／サスティナブルハウジング」
- 塚原肇教授のお薦め「川口マーン惠美／住んでみたドイツ」
- 牛腸ヒロミ教授のお薦め「丸山伸彦監修／すぐわかる染め・織りの見わけ方」
- 槙究教授のお薦め「ジュリア・カセムほか編／インクルーシブデザイン」
- 城島栄一郎教授のお薦め「志村幸雄／笑う科学 イグ・ノーベル賞」
- 大川知子准教授のお薦め「カラーでよみがえる東京〜不死鳥都市の100年〜」
- 川上梅教授のお薦め「思春期・青年期のこころ〜かかわりの中での発達〜」
- 橘弘志教授のお薦め「糸井重里／インターネット的」