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竹内美香先生

男性の本質をとらえる強さを見習わなくては、と思った。

竹内美香先生

竹内 美香(TAKEUCHI Mika)/人間社会学科・教授

略歴:20 歳の時、東洋英和女学院保育科卒業(幼稚園教諭二種、保育士資格取得)、23 歳の時、青山学院大学文学部教育学科心理学専攻卒業(幼稚園教諭一種免許取得)、25 歳の時、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了(文学修士)。企業(情報処理サービス業)企画調査室勤務を経て、母校の大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程に戻る。その後、国立精神神経センター・精神保健研究所・研究生と国立小児病院(現在は国立成育医療センター)アレルギー科・研究生を経験する。32 歳の時に自由が丘産能短期大学専任講師(常勤職)後に准教授。2014 年度より実践女子大学の現職に着任。専門分野は発達心理学、博士(医学)。

Q.先生の専門分野とはどんなものであるかを教えてください。

発達心理学です。発達心理学を専門とする先生は、他学ではよく児童教育学科とか保育課などに籍を置かれている方が多いでしょうね。発達心理学というとどうしても「子どもの心身の成長と発達」を専門にしているというイメージを持つ方が多いと思います。しかし発達心理学は、実際には人の人生のすべての時期に絶え間なく起こっている変化や移り変わりを総合して含む分野ですので、私の研究的興味も子どものことだけではありません。 

特に私が発達心理学の中で気になるのは、大学生の年代、つまり青年期の人たちです。この時期は、自我同一性形成に向けて試行錯誤する中で味わう「生き難さ」の反面で、いろいろなことができるようになって嬉しい、いわゆる「青春を謳歌する楽しさ」の時期でもあるという複雑さを持っています。そして青年期には、これからの自分の仕事を見つけてそれに必要な専門性を獲得する過程が含まれます。青年期は、乳幼児期以上に研究課題も多彩な時期なのです。また青年期は自立に向けて「もがく時」ですが、乳幼児期に獲得されていることが望ましい「基本的信頼感」の有無が、ボディブローのように効いてくる時期でもあります。

Q.先生が研究をはじめたきっかけとはどんな事ですか?

心理学研究を専門とする人の多くは、青年期までに自分自身のことを振り返り「なぜ自分は~なのだろう?」「なぜ人は~なのだろう?」と、少なからず悩んだことがある人だ、と言われることがあります。私もその一人だったかもしれません。

私自身は、当初、保育者になろうと考えて、高校卒業後は保育科に進学しました。しかし、保育の専門科目の中に含まれていた発達心理学の授業を受けて、6 領域科目とは別の、サイエンスの視点で子どもの発達を考える価値に気づいたのがきっかけです。

保育の楽しい毎日の中にも、子どもたちの心身の発達事象は日々展開されています。一見、集団で同じように動いている子どもたちの日常には、実は細かい変化があり、個人差もあります。私は教育実習で保育園や幼稚園に行った時に、プログラムに順応して集団で活動できている子どもたちよりも、庭の片隅でポツンと、なんとなく居場所がない感じの子どもがいることが気になって仕方がありませんでした。

私はそれ以降、保育内容そのものよりも、個人の成育過程に含まれるいろいろな要因に目を向けるようになりました。保育実習で子どもたちの動きを見たのは、私が発達心理学を選ぶ大きなきっかけでした。

Q.心理学の楽しさはどんなことでしょうか?

心理学に限らず、現代科学の多くの領域は「仮説演繹法(かせつえんえきほう)」という手法で、特定の事象が生起する仕組みを解明・説明しようとしています。

心理学は人の内面で起こるので観察・観測の極めて難しい「こころ」を対象としてきた学問と考えられています。しかし実際には現在、心理学研究を専門としている人に聞いても「こころを研究しています」と答えることはありません。「こころ」は、物体に風が当たってその動きが感じられるよりもっと時系列的な事象・現象を扱っているからです。客観的に、つまり外に顕れる観測可能な現象としての「行動」を対象として、ある特定の行動の要因がどのように働いているか、その作用メカニズムを探索しようとしているのが心理学研究であるように思います。

心理学の楽しさは、一言で言ってしまえば、「仮説を立てて、試しに指標を考えて測定し、結果を検証し、結果と仮説が合っていたのか、合っていなかったのか、仮説と異なる結果が出て来たとすると、その原因は何なのか、もっと調べなければならない要因があったのか」と考え進めて行く「推理の過程」にあると思います。

研究では調査や実験などの方法で、データを採ります。しかしデータはデータです。データの向こう側に、その数値を生み出した「生きた人間の活動と選択の意思」が必ずあるはずなのです。それをできるだけリアルにイメージしながら推論するのが、心理学研究の楽しいところだと思います。

Q.女性が働く、ということについて今までどんなことを感じてきましたか?

一般企業に勤めていた時期もありましたし、大学教員としても長く働いていますが、私自身は幸運にも女性だからといって何か差別を受けたことはありません。強いて言えば、一般企業に勤めていたとき、男性と同じ内容の仕事でも基本給与が少し低かったことや、女性だけに給湯室のお茶当番が廻ってくる慣習がある事実に直面した経験がある程度ですね。お茶当番は、女性だけが担当するにしては結構な重労働で、男性社員も担当して欲しかったです(笑)。今はそんな慣習もないのでしょうけれど・・・。せっかく勤めた企業でしたが、そのことも含め、いろいろ疑問は感じましたので、企業をやめて母校の大学院に戻って進路を考えなおしました。

母校に戻って研究を続けて何年か経ったある時に、先輩の紹介があり、前職の自由が丘産能短期大学の専任教員になりました。ここは女性でも差別も甘える余地もまったくない職場でした。学長が女性で、とても仕事のできる厳しい方でした。ここで痛感したのは、男性教職員の方々の本質を捉える鋭さと仕事のスピード感です。学長も人間ですからその意見も完璧ではない場合がありますが、そのようなとき、会議のメンバーに求められるのは「我を張って自分の意見に固執する」ことではなく、議事の本質を捉えて、スピード感をもって対処することです。男性教職員の多くは感情的になることもなく巧みに課題解決していました。私はそれを見て、これからの女性(私自身)もこの強さを見習わなければならないと感じました。このような人が「育てられる」過程は性別を問わず、発達心理学のテーマとしても、さらに注目するべきでしょう。

Q.ゼミでの活動内容はどのようなものですか?

竹内美香ゼミ

3 年生のゼミでは、2015 年度から少し新しい試みとして、前期は自分たちで興味の持てる調査テーマを決めて、まずグループワークで調査研究をすることから始めています。3 年生の後期からは、4 年生の卒業まで「卒業論文を書く」ことを大きな目標にして進めて行きます。卒業論文は各自が自分の選んだテーマで取り組みますので、「テーマを決めたらまっしぐら!!!」という感じです。3 年生の間は、その目標達成のために、途中の過程でどうしても必要になるゼミ生相互の支援ネットワークづくりと、調査票作成の基礎知識、データ処理とグラフ作成などの基本スキルを確認することをします。

2015 年度の 3 年ゼミの前期は、学生たちが「ファッション写真のイメージ評価」について考えてみたいということで、とても楽しい調査を実施しました(処理は少し大変だったみたいですが・笑)。来年度の 3 年生は、どのようなことをやりたいと言ってくるか、今から楽しみです。4 年生は、就職活動と並行して卒業論文の執筆をしています。忙しいし、進路もなかなか決まらない苦しい中での取り組みですが、そういう時にこそ、ゼミ生同士の精神的な支援ネットワーク、つまり「絆」が活きて来ます。実際、学生たちは仲良く助け合っていて、教員も一緒にワイワイ。微笑ましいです。

写真は 2015 年春の卒業式の我がゼミ生たちです。一生のうちでも、こんな笑顔はなかなか見られませんね。

Q.先生の趣味や休日の過ごし方は何ですか?

私のうちは共働きですので、週末や休日は一週間分の食材の買物と料理がけっこう重要な「課題」です。料理が趣味化しています。週末だけでなく、週日も仕事から帰ってから翌日のお弁当のための料理などします。週末は保存しておいて温めなおしても美味しいメニューを充分常備できるように考えます。自分で作ると、やはり体調にも合うので美味しいと思えますし、少し「頑張った素材」を買ってきても、外食よりも結果的には単価も安く抑えられるので、経済的だと思います。

皆さんも卒業して社会人になったら、自分で料理して、お弁当も用意するのが貯金の早道だと思います。また、身体に負担の少ない、栄養バランスのよいダイエットにも、自分でお料理すること、お弁当を持参するのは効果的ですよ!!

趣味…他には、その週末の食材の買い出しも兼ねて、ドライブに行くのがとても楽しいです。軽井沢など好きですね。それから、フィギュア・スケートの季節はTVで日本の選手を応援します。若い人が頑張っているのを見ると、美しくて、ドキドキ、ワクワクします。また今度のシーズンも頑張って欲しいですね。若いって、いいですよね。怪我しないで、大切に過ごして欲しいです。

Q.最後に、学生へのメッセージをお願いします。

実践女子大学の学生さんたちは、前向きで、誠実で、素晴らしいです!自分の母校に誇りを持っているのが感じられます。私もこちらに着任して以来、毎日、幸せを感じながら、学生さんたちと過ごしています。実践女子大学は学生相談センターや保健室など、学生支援の部署の職員の方々も、とても温かく親身に対応していると思います。学生の皆さんも、気軽にいろいろ相談して健康で幸せな学生生活を過ごして欲しいですね。

(聞き手:石黒亜季・峯田伽耶/調査日:2015 年 7 月 28 日)