第17号(1996.12)    目次に戻る


向田邦子全集自立語の索引づくり

 短期大学国文学科教授 加藤彰彦 

 

 向田邦子全集全3巻のうち、第3巻が文藝春秋社から刊行されたのは、昭和62年8月22日(第1刷)であった。著者である向田邦子は、昭和25年3月実践女子大学(当時は専門学校国語科)の卒業生で、軽妙な筆致によるエッセイは多くの読者の共感を得ている。

 昭和62年といえば、文学作品に関する『作家用語索引』(教育社)が刊行されはじめたころである。芥川龍之介(昭60)森鴎外(昭60)志賀直哉(昭62)太宰治(昭64)など、作品研究の推進に役立つところが大きかった。

 そのような風潮の中で、軽い気持ちで(実は創立100周年をめざして)自立語の索引をつくってみようと思いついた。思いつきはよかったのであるが、あとで大変な仕事であることに気がついた。

 索引をつくるといえば、当時は文を単語に区切り、カード化していく作業がまず必要であった。各巻10万語としても30万語。出来上がったカードを五十音順に並べかえるのも大仕事である。

 短大出身で大学へ編入していった学生(延べ

10名)に頼んで、その作業を始めてもらった。文を文節に分け、その中を自立語と付属語とに分けていく橋本文法(中等文法)流の単語認定は、やさしいようでいて難しく、当初は質問の連続であった。採録したカード(名刺大)を2,000枚まとめて一つのカードボックスに詰めると、1巻で50箱にもなった。

 そうこうしているうちに、パーソナルコンピュータ(パソコン)が出はじめ、データベースづくりには大変役に立つことが分かってきた。コンピュータなら、入力したデータを五十音順に並べかえることは、いとも簡単にやってのけるというのである。さっそく図書館をはじめ、学内各部署におられる先輩にお尋ねしながら準備を始めた。ちょうどそのとき、幸いにも電気通信大学から東京学芸大学へ移られた加藤清方先生のご指導を受けることができた。先生は、外国人に対する日本語教育にマルチメディアの考え方を導入され、コンピュータによる日本語教授法の開発に携わっておられた。先生の指導下にある大学院生が入力を手伝ってくれて、1年1巻の割合で入力することができた。(コンピュータの購入及びアルバイト報酬については、学園から研究助成金をいただいた。)

 作業中最も問題となったのは、やはり単語の認定であった。参考にした国語辞典によって品詞の扱い方が違うということも分かってきた。そこで、よるべき国語辞典を1種にしぼることにし、一応『三省堂国語辞典第4版』の品詞分類の方法に従った。

 しかし、一例として、形容詞で「・・・ない」の形のものを挙げてみると、

たよりない  情けない  仕方ない

限りない   心ない   面目ない

などを1語扱いにしているにもかかわらず、「違いない」を連語としているのである。恐らく「・・・に違いない」の形でしか用いられないためであろう。(ちなみに、手もとにある辞書では、集英社及び新明解国語辞典だけが形容詞としている。)

 そんなこんなで、アルバイトの学生ともども大変勉強になったのであるが、やっと全3巻の校閲を終了したところである。さてこれをどういう形にするか、冊子の形にするか、CD−ROM化するか、目下検討中である。

 

○使用機種 Macintosh UVX(アップル社)

      Laser Writer UNTX−J(アップル社)

      YANO Reo Drive3.5

○ソフト  ファイルメーカーPro (クラリス社)

 

(1996.10.30)