第17号(1996.12)     目次に戻る


『館員の横顔』

大英図書館を見学して 

伊藤民雄 

今春、ヨーロッパに海外旅行する機会に恵まれた。その中で、ロンドンの大英博物館は、ロゼッタ・ストーン、パルテノン神殿の彫刻群やミイラといった古今東西の文化遺産を集めた世界最大規模の博物館ということもあるが、有名な大英図書館も同じ建物内にあるということで以前から強く行ってみたいと考えていた。図書館を見たのはわずか一時間程度だったが、その時の印象を書いておこうと思う。

 大英図書館(キングス・ライブラリ)は博物館の正面入口を入るとすぐ右側にある。入場すると何故か最初に土産物の売店がある。何故、図書館に売店が?、と考えながら、通り過ぎると十数個のガラスケースが置かれている図書館の展示場が現れる。室内は全体的に資料の保存のためか薄暗くて良く見えない。フラッシュ撮影は禁止されているが、故意かどうかは分からないが、フラッシュが光っていた。立派な木製のガラスケース内には、複製でしか見たことがないシェイクスピアのファースト・フォリオやブロンテやワーズワースといった著名作家の手稿が並んでいた。マグナ・カルタ(大憲章)とグーテンベルグの聖書は確か展示場の真ん中付近にあった筈だが、この原稿を書いている時点で、どうだったかもう既に記憶がない。私は気付かなかったが、同行者はビートルズの直筆楽譜を見たという。

 展示場を北(奧?)にいくと、遠くからははっきりしなかったがシェイクスピア像がある。両側の壁面にはガラス戸付きの本棚が備え付けられており、天井から床までぎっしりと革製の図書が詰まっており圧倒される。同時に、図書館史で見るような何世紀も前の古典的な図書館を見たような気がした。しかし、古い図書はたくさんあるが、最近の図書はどこにあるのだろう、ふと疑問に感じた。見渡しても、よく写真で見る回廊式大閲覧室の入口らしきものもないし、また情報検索用端末もない。大英図書館という割には狭いし、まるで図書の展示場ではないか、ここは。

 一通り見終わってから休憩場で地図を見ると先に感じたいくつかの疑問は解決した。博物館から北へ1キロの所(セント・パンクラス駅付近)にNew British Libraryがあるではないか。ガイドブックには「1996年全面的に移転」と書かれており、キングス・ライブラリと回廊式大閲覧室(現在は多分見られないかも)を残して移転していた(途中かもしれない)。先に感じたように、ここはやはり図書館の展示場部門なのだ。だから土産物を扱う売店があったのだ。そして、自分が見たいと思っていた閲覧室や情報検索の機能はもうここにはないのだ。この時ばかりは、よくガイドブックを読んでおくべきだったと反省した。

 大英図書館を見学してから、かれこれ半年が経つが、時間がなくて断念した新館にもやはり行って来るべきだったかなと思う。今度行く機会があれば、ガイドブックをしっかり読んで行って来たいと思う。