第23号(1999.12)      目次に戻る


『館員の横顔』

図書館の大事なこと

                         図書館事務部次長 浪 岡 正 継

 

 二十数年前の話で恐縮するが、司書資格を取得するための図書館実習を、駒場の日本近代文学館で受ける機会があった。
 当時寄贈されたばかりの高見順旧蔵書などの外にも、北村透谷の使用した机や中里介山の槍(本物!)などの貴重な資料(お宝)を地下の書庫(倉庫)で拝見させてもらった。

 その時「図書館で一番大切なことは何だと思いますか」と質問されたことがあった。突然のことなので返事に窮していると、「求められた資料が今何処にあるかを明らかにすることだ。」と云われたことを、今でも鮮やかに記憶している。

 目録(データ・ベース)という形で蔵書を明らかにし、貸出されているか否か(貸出されてなければ書架に並んでいなければならない)で図書の現在を明らかにする。そのどちらでもなければ、現在購入可能なのか、他の機関の何処が所蔵しているのかを探すことで明らかにする。国内になければ、海外を探す。リクエスト・サービス;参考業務;図書館間相互協力と呼ばれるサービスも、この範囲を決して出てはいないのである。

 上記の言葉に加えるとしたら何があるだろうか。それは、ひとりひとりの各利用者が十全な満足を得られるようにすることではないだろうか。自己充足性の高い質量共に高い蔵書、使いやすく・わかりやすいサインや検索方法、高度な情報検索サービス及び情報の提供或いは癒しの場としての図書館を、異なるひとりひとりのニーズに則して可能にすることであろう。現実的に不可能に近いのかも知れないが、理念としては決して不可能ではない。

 学園創立100周年という歴史と共に書庫を見渡せば、歴史的価値を主張する資料、社会的現在を主張する資料が確かに存在している。また、学園を取り巻く現状がある。それらを情報ネットワークという世界的広がりのなかで捉えると、図書館が担わなければならない現在的課題も、自ずから明らかになるのではないだろうか。