■主な研究テーマ

1.布の温熱的研究

衣服は人の最も身近な環境であると 言われます。人が温熱的に快適に過ごすための衣服に関して、材料との関係はどうか、着装との 関係はどうか、ということを実験やコンピュータシミュレーションを用いてテキスタイル材料の立場から追求しています。

2.静電気の研究

寒い時期に
発生するスカートのまとわりつきという厭な現象は静電気のいたずらですが、それをなくすにはどうしたら良いのでしょうか。電気を通す縫糸を用いて静電気をなくすことを研究しています。        

3.ミシン縫製の研究

皆さんはミシンの調節がうまくできなくて困ったことがあると思います。実は当たり前なのです。薄く柔らかい布をきれいに縫い上げることは、ミシンの機構からしてそう簡単なことではないのです。では、それを解消するにはどうしたらよいのでしょうか。当研究室では、精密機械であるミシンと何ともつかみ所のない布・糸との合作である縫いの機構を調べ、縫製技術の向上を提案しています。最近では、主として刺繍ミシンを対象として、糸切れや光沢の問題を研究しています。


その他、テキスタイル材料等の物性について研究している。


■平成14年度 卒業論文

1.帯電布の放電機構に関する研  箕輪真理子
静電気は嫌なものです。糸に導電性の繊維であるサンダーロンをわずか10%含ませだけでも十分な制電性が得られることを見いだしてきました。ここでは、そのような制電糸を、例えば衣服などに縫い込んで除電するには、どのような使い方が効果的かということを調べました。実験の結果、2cm程度の間隔で制電糸を配置することが望ましいことが分かりました。また、数本の制電糸を合わせて用いても1本を用いた時に比してそう高い制電性は得られないことも見いだしています。

2.衣内環境の数値シミュレーション−計算条件の検討− 水野沙樹子・山野井亮子
衣服の温熱的快適性に関しては、衣服内の熱・水分の移動や空気の流れについて知ることは大切な基本事項です。したがって、衣服内のこれらを可視化することが望ましいのですが、実験により知ることは大変に難しいことです。なぜならば、衣服内は狭くて複雑な構造を持ち、さらには衣服の物性や構成状態、その他の多数の因子に左右されるからです。そこで、理論的なアプローチの1つとして数値シミュレーションによる衣服内の可視化を行っています。本卒論では、その数値シミュレーションの手法の確立に向けて、主として対象空間の拡大について検討を行いました。

3.布のキシリトール加工による冷却効果  戸塚美帆
キシリトールに冷却作用があることはホームページなどでも紹介されていますが、どの程度の効果があるのか、また吸湿に対する効果はどうかということについて実験的に調べました。麻の布にキシリトールの付着量を数段階(0%〜10%の範囲)変化させた試料を作成し、乾燥状態から20℃,65%の環境下に取り出した時の吸湿による温度上昇は全てに見られましたが、キシリトールの付着量が多いほど温度が上がりませんでした。この結果は、一見、キシリトールの冷却作用によるようにも見えますが、そうではなく、キシリトールの付着により吸湿性が低下するためであることが分かりました。なお、キシリトールを水で濡らした時の冷却作用はありました。


4.濡れたろ紙からの熱・水分移動  
田中理恵
発汗状態にある皮膚からの放熱に関して、ろ紙を用いてモデル的に調べました。これは濡れた衣服からの放熱モデルと見てもよいでしょう。実験は、恒温恒湿室で風の無い環境で行いました。表面熱伝達率はろ紙の含水量に依存せず一定でしたが、水分蒸発速度はおよそろ紙の含水量70%程度までは急激に上昇し、その後一定になりました。このようなことから、ろ紙の含水量と共に上昇する放熱量の増加は水分の蒸散によるものであることが解析の結果として分かりました。

5.カシミヤの暖かさに関する研究  和田佳子

「カシミヤは暖かい」といわれますが、本当に他の獣毛(特にウール)と比べて暖かいのでしょうか? アンケートによるイメージ調査、試作マフラーによる官能検査と温熱的実験から調べました。保温性や接触温冷感に関する官能検査の結果では、巷で言われているように、カシミヤはウールと比較して暖かいという結果が得られましたが、しかしながら、物理的測定からはそのような結果が得られませんでした。この結果から、カシミヤが暖かいという感覚は物理的なことではないと思われるので、この現象を理解するためには、肌触りなどの風合いの面からさらに調べる必要があると考えています。なお、この研究は、平成12年度の卒論の続きで、実験方法を工夫・変更して検討したものですが、両卒論の結果は一致しておりました。

6.ミシン刺繍の糸切れについて 渡辺 瞳
糸切れの発生し易い刺繍パターンを用いて、種々の糸の糸切れの状態を調べてみました。その結果、溶融による糸切れはなく、また単純引っ張りによる糸切れでもありませんでした。撚りの強い糸は擦過による強力低下も少なく、そのような糸は刺繍時の糸切れが発生しにくいものでした。一方、撚りが少ないと、刺繍時の糸切れも発生し易くなるようでした。これらのことから、針の目などの擦過抵抗が大きく関わっているように思われました。また、ポリエステル糸に比して引張強度の弱いアクリル糸は撚りが多くても刺繍時の糸切れが多発しましたが、これは糸そのものの強さによるものと思われました。以上のいろいろな現象についてその理由を調べて対策を考える必要がありますが、それらはこれからの研究テーマとなります。

7.バレーボールのスライディングにおける擦過現象について 長内美知
スライディング時に、ゲームシャツやパンツなどが摩擦熱で溶けてしまったり、機械的損傷を受けたりします。ここでは、その実態調査をしました。スライディング時の損傷には、熱的損傷と機械的損傷がありますが、今回は、熱的損傷、すなわち、スライディング時の摩擦熱で上昇する温度に着目しました。結果としては、肘が最も温度があがりました。その値は、70℃程度で、温度上昇では61℃であった。この温度は、ゲームシャツやパンツを溶融するほどの温度にはなっていないが、温度上昇は0.1s程度で急激に起こっていることが分かった。実験の仕方等のさらなる検討から見直す必要があります


■平成15年度 修士論文のテーマ

1.ウエットスーツの保温性に関する研究  長内美知
ウエットスーツは主に水冷から身体を守るものであるので、ウエットスーツによる保温性能は重要です。本研究では、身体に接する側の布素材と保温性について、最近の保温性素材の利用も視野に入れながら検討する。


■平成15年度 卒業論文のテーマ

1.帯電布の放電機構に関する研究  木下藤代
昨年に続いて導電性の繊維であるサンダーロン繊維による除電について検討します。今年は、編地への編み込み効果について検討する予定です。


2.ミシン刺繍の糸切れについて 宮川昌子
昨年に続いてミシン刺繍の糸切れの原因究明を行います。それから対策を考案して行きます。

3.ミシン刺繍における光沢に関する研究  森島玲子
ミシン刺繍のパターンの作り方は光沢に影響を与えると考えられます。この研究はそれについて実験的に調べることを目的としています。

4.プラスチックの表面性状と接触温冷感 内田麻以
プラスチックは金属などに比べれば触ったときにそう冷たくはないが、それでも例えば便座に冬場に座るときは当初かなり冷たく感じる。このような時でもプラスチック製品の表面を工夫することで温冷感を改善することも考えられる。本研究では、プラスチック製品の表面性状と温冷感を調査する。

5.濡れた布素材からの熱・水分の同時移動 高橋江美
昨年度に、濡れたろ紙からの熱・水分移動について検討した。本研究はそれに続く研究で、温度と共に蒸発水分量の自動計測を行い、布種、風その他を要因として、熱・水分の同時移動についてさらに検討する。

他は検討中。


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