卒業論文要旨(2003年度)

子供部屋の意味に関する研究

2003年度卒業論文 空間デザイン研究室 小林史枝・染谷有香・中島理沙

1.はじめに

本研究では、現代の子供部屋の状況を捉え、また子供の成長過程やプライバシー感との関わりに注目することによって、子供部屋の意味とは何なのか考察する。

2.研究の方法

中高一貫の私立女子校において、中学1年生〜高校3年生までの各学年1クラス(約40人ずつ)、計237人を対象とし、子供部屋の様子や家での過ごし方等に関するアンケート調査を行った。(表1)

3.結果

(1)全体的に
約8割が一人部屋である。高学年ほど一人部屋の割合が大きい。部屋の所有物は、学年によって特に大きな差は見られなかった。携帯電話の所有率はかなり高い一方、メディア物(PC・TV・TVゲーム)の所有率はまだ低い。部屋での過ごし方等も含め、全体に年齢による変化は顕著ではないが、家族との関係を詳しくみると、プライバシー意識に変化がある可能性が見いだせた。

(2)一人部屋の有無
一人部屋かどうか出持ち物の差は見られなかった。低学年のうちは一人部屋かどうかによる差は少ないが、学年が上がると様々な差が見られるようになった。たとえば高校生では一人部屋の方が身の回りのことを自分でする傾向が強い(図1)。

(3)プライバシー意識
中学では家族がノックをするかどうかと家族の入室を気にするかどうかが強く関わるが、高校では特に影響がなくなる(図2)。

(4)不満
親が自分の部屋に入ってくることが気になる人は、家族や物など全てにおいて不満が多い。全体的に中学では人に対しての不満が多く、高校になると人に対しての不満よりも物や空間に対する不満の方が多くなる。

(5)メディア
部屋に欲しい物はTVやPCがもっとも多いが、実際にこれらの物で部屋が満たされている例はごく少数である。ただしメディア物の数が多くなるほど、自室で過ごす時間が長くなる傾向にあった。

4.考察

子供部屋での過ごし方や意識は、中学では家族との関わり合い方、高校では一人部屋の有無にそれぞれ影響されていた。

子供部屋は、低学年では家族という塊の中での「半プライベート空間」を意味し、それが徐々に子供にとっては、家族と離れ一人で過ごしたい欲求を満たすための「プライベート空間」を意味するようになる。同時に家族が、子供に対して気を使い始めるのもこの時期である。最終的には、個人と個人という新たな家族関係の中での「プライベート空間」を意味するものへと変化するのではないだろうか。

最後に気になることは、メディア物は部屋での過ごし方に影響を与えており、今後もこれらの物が増えるにつれ、大きな影響を与える可能性がある。

(表1)アンケート項目
(図1)一人部屋の有無と掃除の状況(グラフ)
(図2)家族の入室方法と気になるかどうか(グラフ)
(図3)自室で家族と話す割合(グラフ)
(図4)子供部屋の意味の変化



2003-2004, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2004-3-02更新