卒業論文要旨(2003年度)

裏原宿にみる商業空間の魅力に関する研究

2003年度卒業論文 空間デザイン研究室 高橋南海子・田所季恵・山本有紀

1.目的

近年、様々な大規模開発により大型商業施設が誕生し、多くの客を集めている。それに対し、人為的な開発ではない自然発生的な街の中にも、様々な人が訪れ、注目を集めている場所が存在する。本研究では、そのような、時代とともに変化し、成長してきた商業空間の魅力を探るべく、来街者の行動心理という観点から分析し、考察していく

2.調査の方法

神宮前4丁目から6丁目までの、裏原宿と呼ばれる地区を対象として、以下の調査を行った(図1)。

3.物理的環境の特徴と行動の特徴

対象地域は、大通りを一本入った住商混在地域である。この地域の環境の特徴として見出されたものを表1に示す。来街者の特徴としては、少人数で訪れ、ブランドよりも個性を重視した買い物志向があり、目的店舗をきっかけとしながら、周辺を散策したり休憩する。店の人からのアドバイスや何気ない会話が行われることもあり、そこから自分の新たな着こなし等を見出していくこともある。

4.訪れる人の心理的構造

対象地域において来街者が魅力を見出していく心理行動の構造を、図2のように「期待」「探索」「発見」という3つの要素の関わりとしてまとめた。

「期待」とは、マスメディアなどによる情報に加え、実際に街で体験することで得た情報によって、頭の中につくり出される環境のイメージである。実際の環境の多様さが期待を喚起する。

「探索」とは、実際に街を散策することで、様々な場所にアクセスし、情報をピックアップすることである。いろいろなレベルで開放的な街の環境が、来街者の探索行動を誘発する。

「発見」とは、環境のなかから自分にとっての価値を見出すことであり、見せや商品などお気に入りの対象の発見もあれば、店員とのコミュニケーションによる自分のスタイルの発見もある。環境が自律的であることによって、環境と個別の関係をつくり出すことが出来る。

来街者が訪れるたびに、期待が探索を促し、探索が発見につながり、発見が再び期待を呼び起こすというサイクルが成長しながら連続していき、その都度新たな魅力が見出されている。そして様々な環境の特徴が、このサイクルの成長に寄与している。

このような、訪れる人にとっての未完成さこそが、裏原宿の商業空間の魅力であり、人を惹きつける要因であるのではないだろうか。対象地域として扱った裏原宿は、このサイクルが上手に成長しているため、注目を集めている場所になったのではないだろうか。

(図1)対象地域の写真
(図2)環境の特徴
  道:見通しのきかない道・交通規制がある・表通りと裏通り
  街:商業と住宅の混在・新旧の混在・規模の多様性・店の立地の多様性
  店:個性的な運営・個性的な看板・オリジナル商品を扱う店の多さ
  建物:住宅の再利用・開放的閉鎖的ファサード・住商複合建築
  人:多様な人の存在(訪問者・店主・居住者)
(図3)商業空間の魅力と来街者の行動心理



2003-2004, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2004-3-02更新