卒業論文要旨(2005年度)

商業施設の変容と魅力

2005年度卒業論文 空間デザイン研究室 竹中千枝・福田実希

1.目的

 近年、街の再開発が進んでいる。その先駆けとして、大型複合商業施設が建設されることが多い。それぞれの街に建設される複合商業施設、中でも現在最も注目されている六本木ヒルズの魅力とは何なのか。歴史的な流れの中での複合商業施設の変化、各施設のイメージや実際の利用状況を探った。

2.調査方法

調査1:「新建築」1995年1月号〜2005年8月号における複合商業施設を抽出し、分析した。
調査2:首都圏の大型商業施設10施設に関して、施設イメ−ジ等のアンケート調査をした(表1)。
調査3:六分木ヒルズにおける、利用する人々の行動や施設の利用状況について調査した(11〜19時)

3.結果および考察

(1)10年の複合商業施設の流れ
 施設の隔年のプロジェクト数、延床面積の合計を見ると、1996年をピークに全体的に下降気味だが、2003年建設ラッシュとも言うべき大きなピークがある。立地は全体的に、とくに2000年以降はほぼ首都圏に集中している(図1)。この時期では、一施設が単体で建設されるのではなく、街の再開発と共に一度に複数の施設が建設されるかたちが目立つ。この10年間の特徴として、施設は住まいや文化施設が複合されることが多い。環境面、内と外の繋がりから、庭園や広場を取り入れることも多い。語らいの場、施設同士の繋がりとして、アトリウムのデザインに力を入れるところも多い。六本木ヒルズは、2003年の建設ラッシュの中にあり、「文化都市」をテーマに文化施設との複合が目立つ。

(2)イメージと利用方法による分類
 対象とした10施設の立地により、観光地型となっている観光地型、人が集まる市街地に建てる市街地型とに分けられた。また、施設イメージの分析結果から、高級指向型、親近型に分類した。それぞれ表2のような盗聴が見られた。全体で市街地型であり親近型の施設が最も好印象を得ている(図2)。しかし、六本木ヒルズはこれらの分類にはあてはまらない施設であるようだ。アンケート調査から、新鮮で高級感を維持し、行きにくく複雑だと漢字ながら来客者へ明るく楽しい施設であることがうかがわれる。

(3)六本木ヒルズにおける利用状況
 現地調査の結果、サラリーマンやOLが多い中、観光客も目立った。昼間はお年寄りや家族連れ、夜はカップルが多い。オフィスビルやファッションビルなどビルごとに人の利用者層が異なるが、施設全体で見ると幅広い年齢層の人がいることが確認できた。

4.まとめ

 複合商業施設は立地やイメージにより、いくつかのタイプに分類することができた。ただし六本木ヒルズは、市街地にありながら観光地的要素も含み、高級でありながら親しみも持てるという複合的な魅力を持つことが示唆された。その結果、幅広い層の人に利用されているのではないだろうか。

(表1)アンケート調査内容
(表2)立地・利用状況分類と特徴
(図1)年代別プロジェクト数(グラフ)
(図2)アンケートによるイメージ比較(グラフ)



2003-2005, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2006-02-14更新