卒業論文要旨(2005年度)

大学生の社会的ネットワークの構造 〜血縁と地縁の再構築に向けて〜

2005年度卒業論文 空間デザイン研究室 小林由衣子

1.目的

 現代は加増関係や近所付き合いが希薄になる傾向があるといわれている。とくに大学生にとって近所付き合いは希薄な印象があるが、実際のところどうなのだろう。そこで、大学生の社会的ネットワークの現状を捉え、家族や近所との関係がどのように影響しているかについて分析した。

2.方法

 本学の4年生を中心とした大学生15人に、自分が現在関わりがある人すべてを要旨に記入してもらい、その後ヒアリング調査を行った。

3.調査者の近所付き合いの実態

・近所のうちと家の行き来がある…15人中6人
・近所の人と会ったら会話をする…15人中4人
・近所の人とは挨拶程度の付き合い…15人中4人
・近所付き合いはない…15人中6人

4.重要な人間関係の構築の仕方について

 自分との関わりの深さ(レベル)を水平軸に、その関係の継続性を垂直軸にとって、3時限のマップ(図1)を作成した。とくに「自分にとって欠かせない人」との関係と、知り合った時期に注目し、それぞれの時期で段階的に関係を作り現在まで継続させているタイプ1(図2)と、ある一時期に重要な人間関係を集中的に作り現在まで継続させているタイプ2(図3)に分類した。
 タイプ1は自分にとって重要な人間関係に近所の人が入っていることが特徴で、タイプ2は近所の人との関係があまりみられなかった。

5.家族・近所に対するコメント分析

(1)近所との関係
 タイプ1には「家族ぐるみ」の近所付き合いがある人が多い。また、どちらのタイプも近所付き合いは母親同士が行っている場合が多く、母親と仲のよい人は比較的自然にとけ込めている傾向があった。

(2)家族との関係
 タイプ1の全ての人が家族と趣味を共有していた。たま、親や兄弟の知り合いと仲良くなるなど、家族をきっかけに人間関係を広げていくのも、ほとんどがタイプ1であった。

6.タイプ1、タイプ2に関する考察

 タイプ1は関係を継続させることで自分の居場所を作る傾向がある。近所のような固定的な環境からも重要な関係を作り、継続させることができている。一方、タイプ2は親しい人間関係を自分自身で選んでいくが、そこから関係が広がらない傾向がある。家族や近所のような固定的な環境は選択されないようだ。

7.まとめ

 大学生にもある程度の近所付き合いがあることがわかった。そして、大学生の人間関係の構築の仕方と家族や近所付き合いとの間に関係性を見出すことができた。昔からの継続した人間関係を基盤に持つタイプ1は、家族や近所との付き合いが豊かと言え、さらにそこから人間関係を広げていることもある。結果として幅広い年代と付き合えているという意味で、人間関係の幅を「豊か」にしている可能性がある。

(図1)人間関係3次元マップ
(図2)タイプ1、(図3)タイプ2(※自分にとって重要な人間関係(レベル1)だけを取り出し、できた時期との関係を示したもの)



2003-2005, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2006-02-14更新