卒業論文要旨(2006年度)

松が丘団地における人が集まる複合施設の提案

2006年度卒業論文 空間デザイン研究室 田口由佳

1.はじめに

 松が丘団地は埼玉県所沢市にある緑に囲まれた閑静な高級住宅街である。この団地は1980年代初頭に開発され、現在57.5haに約800世帯の人が住んでいる。しかし、昼間でも人々の姿は少なく、静まりかえっており、人々の交流が多いようには見えない。実際、空き巣などの被害が年々多くなっており、あまり安心して暮らせる環境とは言えない。純粋な住宅団地として計画・維持されてきたこの団地内には、スーパーやコンビニ・飲食店など一切なく、不便なだけではなく、夜などは安心して歩行できない怖さがある。

 また、この団地の中には公園がたくさん計画されているが、あまり利用されていないのが現状で、手入れも行き届いておらず、実際に子どもたちの姿を見るのは1箇所の公園のみである。団地全体として子どもたちが安心して遊べる空間にも、高齢者がゆっくりと散歩したり楽しんだりする空間にも、なりえていないと言える。

 こういった様々な問題を解決すべく、この松が丘団地に人が集まる複合施設を提案する。子どもたちが安心して遊べる空間、人々の交流がある空間、癒しの空間をこの施設を通して創り上げ、安心して暮らせる街作りを目指す。

2.方法

 今回この松が丘団地の中にある「南大谷公園」を敷地として、幼稚園・保育園、高齢者施設、図書館、スーパーといった4つの施設が融合した複合施設を提案する。敷地の大きさは、約1500m×40m、高低差約9mの細長い敷地である。この複合施設は、交流の場と便利さを追求したものにする。

 幼稚園・保育園は、建物を分棟型として融通性をもたせつつ、幼稚園と保育園の一元化教育を行うことを意図している。高齢者施設では、主にデイサービスを行い、高齢者の方々の交流だけでなく、子供達との交流、さらに地域の人との交流も出来るように、オープンな造りにしている。図書館は、敷地の中心部に配置し、周囲のランドマークともなるように外観に特徴を持たせている。図書館のカフェコーナーは全面ガラス張りにし、子供達の遊ぶ姿を見ながらゆったりとした時間を過ごせる場所とした。スーパーは人々の交流の場所として賑わいを生み出すことを意図している。スーパーの外にはテイクアウトすることが出来るお店を設け、何か食べながら人との交流を楽しむことができる広場とした。

 さらに「癒し」を求め、水が流れる歩行空間と水の広場を設けた。歩行空間は癒しを求めるだけでなく、ところどころにちょっとした工夫をし、歩くだけでも楽しめる空間を考えた。この歩行空間は、4つの施設を結びつけ、各施設を利用する地域の人同士の様々な出会いを誘発することを期待している。

3.結果

 この施設を通して、団地の生活する上での利便性が向上するだけでなく、人々の交流が広がり、気軽に出歩きたくなる街として、松が丘団地全体が活性化されることが期待できるだろう。さらに、人々の交流が増えることで犯罪なども防ぐことができ、安心して暮らすことができる街になり、子供達の声も聞こえるようになるに違いない。

(図1)松が丘団地の全景(模型写真)
(図2)複合施設の外観(模型写真)



2003-2007, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2007-02-14更新