卒業論文要旨(2006年度)

好きな場所における人と場所との関わりについて

2006年度卒業論文 空間デザイン研究室 植木真理

1.はじめに

 私たちの周りにはたくさんの場所があり、その中でも人それぞれに好きだと思う場所やよく行く場所やまた行きたいと思う場所がある。そこで、人々が好きな場所やお気に入りの場所にどのような場所を挙げ、またその場所が人とどのように関わりを持っているのかを調べる。

2.調査方法

 2006年11月〜12月に19〜22歳の男女48名にアンケート調査を行った。まずその人の行動パターンや嗜好パターンを聞き、次に自分の好きな場所、お気に入りの場所などを1人3カ所まで挙げてもらい126カ所のデータを回収した。その場所の様子などが分かるように選択する質問の他に、絵と文章でも表現してもらった。

3.結果・考察

1)全体の傾向

 挙げられた場所のうち最も多かったのは飲食店や買い物のできる場所であった。続いて自然のある場所や学校の中の場所なども好きな場所として多く挙げられている(図1)。
 その理由としては、飲食店で「おいしいものを食べられる」ことや、お店で「見たいものが見られる」など、自分の目的を満たすことができる場所ということの他、その場所の環境の「静けさ」や「景色の良さ」、あるいはその場所で「落ち着く」「ゆったりできる」こと、さらにその場所が「気兼ねなく行ける」「慣れている」ことが理由として多く挙げられていた。全体的に、気軽に行けて、落ち着いてゆったりとくつろげる場所が多いことがわかった。また、建築やインテリアのデザインなども好きな理由に関係していた。

2)場所における人との関わり

 これらの場所を、他者との関わりという視点で分析した。その場所で1人で居るか、2人で居るか、3人以上で居るかに分けてみると、「1人」60カ所、「2人」37カ所、「3人以上」39カ所と、自分1人の場所が多く挙げられた。さらに、それぞれを周囲の環境との関わりの視点で分類してみた。「1人」は表1の5タイプに分類でき、様々な関わり方を見出すことができた。「1人」とはいえ、完全に自分の世界にこもるわけではなく、お店に店員と話しに行く人や、公園にいる夫婦や子どもを見てのどかな気分に慣れたりと、周辺の人や物などと関わりを持つタイプが見出された。これに対し、「2人」や「3人」はこれほどのバリエーションはなく、特に周りの人や物などと関わりを持つタイプは乏しい結果となった。「2人」「3人」の状況では、その場所での環境との関わりよりも、その人やグループで過ごすこと自体が目的になりやすいと思われる。

(図1)好きな場所としてあげられた場所(グラフ)
(表1)「1人で居る」の分類
 ・完全孤立タイプ:周りには人がいなく、完全に一人
 ・一人まったりタイプ:周りに人が入るけど、関わりがなく、気にならない状態
 ・関係性タイプ:またに周りの人と関わりがある。もしくは周りの環境が関係してくる状態
 ・情報収集タイプ:周りに人ではなく、興味のある物などがある状態
 ・行為集中タイプ:何かをやっている、何かに熱中している状態
(図2)完全孤立タイプ「バイト先の休憩できる階段」
  誰もいないから、ゆっくりできる。寝る。落ち着く。ごはん食べる。
(図3)関係性タイプ「代官山Omni-Cafe」
  カウンターに座ってお店の人たちとお喋り。たまに他の常連さんたちと一緒にみんなでお喋り。



2003-2007, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2007-02-14更新