卒業研究要旨(2007年度)

吉祥寺にみる街の魅力に関する研究

2007年度卒業研究 空間デザイン研究室 石崎智・加島あづさ

1.はじめに

 『魅力的な街』とはどんな街であろう。吉祥寺は老若男女から支持され、しかも人気が衰えていない。人と街との関連性を考え、それぞれが合わさり生まれる魅力とはどんなものか探ることを目的とする。

2.方法

 吉祥寺の街の魅力を3つの観点から調査した。

  調査1、吉祥寺の街の魅力を題材に写真撮影。
  調査2、来街者の意識調査(2007年11〜12月に50名)
  調査3、店舗インタビュー(2007年12月に10店舗)

3.結果および考察

3-1.街の性質から見た魅力

 調査1より、自分達の視点で街の性質としての魅力を撮影した400枚の写真から12のキーワードを見出し、キーワードをさらに3つの要素として分けた。

(1)多様な表情 街の構造の観点から、路地のような「抜け道」で生まれる道の選択肢、店の中と外が繋がり楽しさが増す「コーナーショップ」や「ガラス張り」、また対照的に閉鎖的な造りで人を引き込む「隠れ家」のようなお店、公園・街中の「緑」の多さ、アート的な「はみ出しもの」がつくる街の活気という6つのキーワードがあげられた。

(2)多様な行動 人の行動や活動の観点から、職人の技が見え店と客との会話がうまれる「店頭販売」、宣伝効果にもなり街に活気を与える「行列」、世代問わずに食卓を囲む「立ち飲み外飲み」の光景、語らい安らぐ場所である「座る」行為という4つのキーワードがあげられた。

(3)多様な文化 文化、専門性の観点から、「昔ながら」の風景が所々に残る場所、「個性や趣味」を生かすことのできる場所という2つのキーワードがあげられた。

3-2.来る人から見た魅力

(1)歩く楽しさ 吉祥寺のイメージの調査(調査2)では「井の頭公園」、「歩いて楽しい」、「老若男女で賑わう」が順に高いことが分かった(図2)。また好きな所の調査では「自然がある」、「街の規模」、「歩ける」という順に高いことが分かった。街が歩きたくなるちょうどいい規模であること。そして歩く人が増えることで街がさらに賑わうと考える。

(2)色んな人の居場所 調査3より、吉祥寺は多様な表情が集まるという事が分かった。平日の昼間に中年の男性がお洒落な立ち飲み屋にいることや、敷居の高そうな画廊に家族連れや若者が多く訪れることなど不思議な光景が吉祥寺だと受け入れられる。訪れた人が自分の居場所を見つけることができる街であると考える。

3-3.店主が創る魅力

(1)魅せる工夫 調査3より、それぞれの店が歩く人を惹きつける店頭のディスプレイや看板の工夫をしている事が分かった。歩く視点で考えられた店の工夫があることで街に多様な表情が生まれ楽しいのである。

(2)受け入れる隙間 古くからあるハモニカ横丁に新しく出店した店主の話から、世代問わず色んな人が訪れること、近所の老舗の店とも近所付き合いがある事が分かった。新しいものを受け入れる隙間が常にある街の懐の大きさは吉祥寺ならではと考える。来街理由の調査(調査2)では「品揃えが豊富」、「個性的な店が多い」ことがあげられた。若者が新しいお店をどんどん開いていることでチェーン店ではない店主の思いが感じられる個性的な店が多いのだ。新しい店が入ることで自分のこだわりをもつ人が集まり、街の活気が増すと考える。

4.まとめ

 図3のように、街の性質から見た魅力、吉祥寺に来る人から見た魅力、店主が創る魅力それぞれの要素の関連性をまとめた。街の構造、人の行動、文化や専門性それぞれから生み出される街の性質。人が歩き、人と店と街が相互に触れ合い、色んな人が自分の居場所を見つけられる街の姿。そして、店主が創る魅せる為の店の工夫や受け入れる隙間、それぞれの要素の繋がりが一つでなく全てに繋がりをもつことで相乗効果となり魅力が増すと考える。この繋がりこそが、吉祥寺という街が多くの人を惹きつける魅力ではないだろうか。

(図1)繋がり合う吉祥寺(写真)
(図2)来街者による吉祥寺のイメージ(グラフ)
(図3)人と街の関連性(モデル図)



2003-2008, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2008-01-30更新