卒業研究要旨(2007年度)

下北沢「再開発」計画を考える

2007年度卒業研究 空間デザイン研究室 小谷祐子

1.はじめに

 下北沢が「再開発」計画により大きく変わろうとしている。街並みや文化に魅力を感じる人がたくさんいる中でこの計画は大きく問題視されている。人々に必要とされている計画なのか明らかにする。

2.研究方法

 役所が発行する資料、インターネットなどから情報を集めた。役所、反対グループにヒアリングを行い、計画およびその経緯を把握した。

 次に、下北沢にきていた10代から60代の男女計50名に現在の下北沢および計画についてアンケート調査を行った。また、商店街と食品市場にある4店舗に計画についてヒアリング調査を行った。

3.結果

 次のような観点から問題点が見出された。

(1)計画の有効性について(図1)

 最大26mの広幅員道路と駅前広場が整備される。また、壁面位置制限や用途制限などにより統一感のある街並みをつくりあげる。利点とされているのは災害時の避難経路となることや延焼遮断機能があり防災に有効だということ。渋滞緩和やバス・タクシー利用がしやすくなり交通が便利になることなどがある。

 しかし、道路により街が分断されることや中心部への車の流入、街の高層化などの問題点もある。行政が強調している防災の観点も、防火性能上格段問題のある地域でないことが地震防災マップから明らかになっていること、アンケートでも防災の不安をあげる人はほとんどいなかったことなどから計画の必要性が疑問視される。専門家からは建物の不燃化や防火水槽の設置がより有効だという指摘がある。

(2)計画の進め方について(表1)

 補助54号線は1946年の計画が小田急線の地下化に伴いよみがえったもので2006年に事業認可がおりた。地区計画以外は2003年以降の反対グループの発足以前に計画がつくられており、見直しを求める要望書が提出されても、その後見直しは行われていない。

 地区計画については、住民の意見を反映したものだと役所は言う。街づくり懇談会との話し合いの上とのことだが、商店会の役員少数によるもので、一般に公開もされておらず一部の意見しか汲み取られていないと言える。

(3)下北沢らしさについて(図2)

 アンケートにより来街者は歩く楽しさに価値を見出していることが分かった。狭い路地には小さな個人による店舗がひしめき合い、そんなおもちゃ箱のような街並みが魅力の一つになっている。ただ店舗が集積しているだけではなく、渋谷や新宿にはないご近所感があり、人とのつながりを感じることが出来ることが人を惹きつけているのである。街が高層化され、大資本が参入するようになり画一的な街になるとこれらの魅力は失われてしまう。

4.まとめ

 下北沢は他にはない独特の街ということを最大の魅力として発展してきた。それをつくってきた街の人の想いを大事にし、下北沢の個性を生かした街づくりにしていくことが必要である。

(図1)計画概要
(図2)アンケートに見る下北沢の魅力(グラフ)
(表1)計画の経緯



2003-2008, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2008-01-30更新