SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2007年度卒業研究 空間デザイン研究室 小此木綾香
生き生きしたマチの条件として、C・アレグザンダーは生きているパタンの存在を挙げている。本研究では、マチを構成するミドリのパタンに注目し、マチとの関わりを考察する。
神宮前5丁目、6丁目のキャットストリート(以下CS)、および明治通り沿い(以下MS)を対象として、以下の調査・分析の手法で行った。
(1)対象地のミドリの抽出・ナンバリング両対象地より抽出したミドリから、109のプロフィールを作成した。それをもとにKJ法による分析を行い、ヒトの関わり方や経緯やタテモノ・マチに及ぼす影響などを踏まえ、12のパタンに分類した。各パタンにおいて、ミドリを介したヒト・タテモノ・マチ等との相関図を作成し、整理した(表1)。それぞれのミドリは、多かれ少なかれヒトの行為によって生成し、あるものはデザイン要素として、あるものはタテモノと一体化し、あるものは育てる楽しみとして個別に作用する。それに加え、ミドリ特有の、なじみのよさ、彩り、変化する力、やわらかさという性質により、その作用がとけこみあい、ヒトとヒト、そしてマチをつないぐ媒介として、重要なマチの要素となっている。
両対象地において、ミドリのパタンの連鎖や重ね合わせによるマチの構造図を作成した(図1・2)。MSは、計画的にミドリの特性を利用したマチで、来街者の印象もミドリによるところが大きい。しかしパタンとしてみると種類が少なく、ミドリの作用も孤立的で、ヒト・ミドリ・マチの関わりが感じにくいものとなっている(図1)。一方CSでは、実際のマチの景観ではミドリの存在がMSと比べると少ないように感じられる。だが、パタンの種類は多く、それらがとけこみ合ってヒト・ミドリ・マチの関係が連なり、広がっている。それぞれのプロフィールの個性も強く、ヒトとミドリ、ミドリとミドリのつながりが感じられ、見た目以上に存在価値のある、個性豊かなカオを垣間見ることが出来る(図2)。
マチで見られるミドリは、タテモノやマチのデザイン要素として計画的・人為的に用いられるものばかりではない。ミドリをマチのためにおくという意識はなくても、ヒトが様々な意図でおいた個性あふれるミドリが、複雑に混ざり合い、マチの要素になるのだ。マチという土台の上にヒトとミドリがいる。ヒト+ミドリ/マチ。
<参考文献>Christopher Alexander/『A Pattern Language』1977年(鹿島出版会 1984年),『The Timeless Way of Building』1979年(鹿島出版会 1993年)
(表1)ミドリのパタン例
・タテモノをのみこむ:ヒトがミドリを残存させミドリがタテモノに作用しマチの一部となる。ヒトがタテモノを建てタテモノがミドリへ価値を与える
・ミチをつくる:ヒトがミチとミドリをつくりミチにミドリが価値を与えミチとマチがセットでマチの要素となる
・ヒトをつなぐ:ミドリがヒトとヒトをつなぎマチにミドリが作用しマチがヒトに作用する
(図1)明治通りの構造図
(図2)キャットストリートの構造図
2003-2008, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2008-01-30更新