卒業研究要旨(2007年度)

川越の街並みにおける屋外広告物に関する研究

2007年度卒業研究 空間デザイン研究室 鶴間さつき

1.はじめに

 川越の一番街周辺は伝統的建造物保存地区に指定されており、屋外広告物に関しては川越市における屋外広告物規制法があり、さらに一番街には『街並み規範』が設けられている。しかしまだ街並みの景観にそぐわない屋外広告物があるように感じた。本研究は川越の歴史的な街並みにおける屋外広告物の現状と課題を明らかにすることを目的とする。

2.研究の方法

(1)伝建地区(A)と隣接する2地域(B、C)の計3地域(図1)を対象に、それぞれの地域内の建物と屋外広告物について、形態、色、素材、内容などを調査した。

(2)一番街における屋外広告物の分布図を作成し、この結果をもとに、この地域の屋外広告物に対する印象について街頭ヒアリングを行った。(80名)

3.結果と考察

3-1 3地域の比較

 図2より、屋外広告物の数はAが最も少ないが、それほど大きい差ではなく、中心通り沿いだけを見るとAが一番多い。形態ではAは移動可能な立看板やのれんが多かった。素材(図3)では、B・Cに比べ木製や布製などの天然素材が多く使われていた。また、Aでは色や大きさについても抑えられており、伝建地区であるAでは比較的街並みへの配慮が行われていることがうかがえる。

3-2 伝建地区内の屋外広告物

 一番街における屋外広告物に注目すると、『街並み規範』に照らしたとき素材では約半数、色では4分の1が沿わないものであった。

 屋外広告物の分布を見ると、それら規範に則っていない物が密集する場所があった。その場所に対する観光者へのヒアリングの結果、『赤が目立つから』、『ほかに比べてごちゃごちゃしている』などの理由から町並みの景観を壊していると感じられやすいということが分かった。

 観光者が好む・街並みに合う屋外広告物を決める第一条件としては、形や内容、素材を挙げる人が多かったのに対し、嫌い・街並みに合わないものとしては色を挙げる人が多かった。

4.まとめ

 伝建地区にはさまざまな規範があり、比較的街並みへの配慮がされていた。しかし規範外の屋外広告物が密集する場所もあり、こうした場所が他の場所に比べて観光者にマイナスイメージを与えやすい。とくに色による影響が強く感じられた。

(図1)調査対象地域(図面)
(図2)形態別・屋外広告物数(グラフ)
(図3)素材別・屋外広告物割合(グラフ)
(図4)色の規範外物件分布(図面)
(図5)規範外物件の密集例(写真)



2003-2008, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2008-01-30更新