卒業研究要旨(2008年度)

OLの生活環境としてみたオフィス街 〜自由時間の使われ方〜

2008年度卒業研究 空間デザイン研究室 平地純子・松崎景子

1.はじめに

 オフィス街で働く女性(以下OL)にとって、仕事から解放される自由時間に注目したとき、オフィス街はそこで生活するための環境と言える。そうした視点から、実際にOLはオフィス街をどのように利用しているのか、生活環境としてどのような空間を求めているのかを探ることを目的とする。

2.調査方法

 オフィス街で働くOLにオフィス街での生活についてのヒアリング調査とアンケートを実施した。その結果、丸の内19人、汐留22人、西新宿20人、計61人の回答が得られた。また、実践女子大学の3、4年生にOLのイメージと3つの街のイメージについてのアンケートを行い、106人の回答が得られた。

3.OLのオフィス街での生活

 お昼に外食する頻度は週平均2.3回、コンビニ・お弁当等の利用頻度は週平均1.8回で、週の半分をオフィス外で食事していることがわかる。ただし、雑誌やテレビで話題になっている飲食店に行くことはほとんどなく、近隣の店やお弁当を買うなどして節約している現実的な一面が見られた。ランチは2〜4人で食事をしている人が多いが、中には職場のわずらわしい人間関係から離れたいので一人で食事をしたい人もいた。
 通勤途中でのオフィス街の利用の仕方は、汐留はカフェ、CDショップ、本屋、西新宿はショッピング、丸の内は散歩と答えている人が多い。丸の内では30分食事をして残りの時間を散歩やショッピングをし、頭のリフレッシュをしている人もいた。

 

4.街ごとの生活の様子の違い

 食事と言う側面からは街ごとの大きな違いは見られなかったが、利便性や環境の良さには差が見られた。丸の内は季節を感じる風景があり地下道より地上を歩きたくなる。便利さに加え歩いていても気持ちが良い街だ。西新宿は、仕事後新宿に流れOLにとって働く街にすぎないが、新宿全体で見ると買い物も娯楽もあり便利な街だ。汐留は新しくオフィス街としての一通りの機能があるが、OLは昼休憩しか利用せず会社帰りは違う街に流れる。近代的新しさより値段や日常的な買い物ができる等生活する上で便利さを求めている。

5.OLにとってのリフレッシュとは

 オフィスにおける空間や人間関係は息が詰まるものであり、そこから解放されリフレッシュすることの必要性に対するコメントが、ヒアリングの中で多く得られた(表1)。オフィス街の中にも様々なリフレッシュをする空間や状況があることが分かる。その中にもその街で働く人々のためにデザインされたもの、OL自らがオフィス街で生活する中で見出しているものがある。

6.考察

 OLは自由なお金と時間を活用し満喫しているイメージではなく、意外と現実的であり、次の日のことを考えると遊んでいられないというのが実態だった。ランチタイムは値段を考え節約しており、OLに描く華やかなイメージとは違う質素な生活が見られた。また、綺麗にデザインされている環境は、美観として整っているとしても、もしそこが利便さに欠けているものであれば、OLにとって必ずしも評価されるものではなかった。
 OLは限られた自由時間を工夫し、ささやかな幸せやリフレッシュを見出していた。オフィス街に様々なリフレッシュ空間があることは、生活環境を豊かにする重要な要素の一つではないだろうか。

(表1)リフレッシュの種類



2003-2009, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2009-01-22更新