卒業研究要旨(2008年度)

多摩ニュータウンにおける「街の居場所づくり」に関する研究

2008年度卒業研究 空間デザイン研究室 小宮山さくら

1.研究の背景・目的

 現在高齢化が進む多摩ニュータウンにおいて、コミュニティの再構築を目的とし、住人が気軽に訪れることのできるような場所づくりの試みが行われている。このような「街の居場所づくり」として、「福祉亭」(以下F)と「ふらっとラウンジ」(以下L)に注目し、その利用実態を調査し利用者にとってどのような意味を持つ場所となっているか明らかにする。

2.研究・調査の手法

・観察調査:表1の2施設を対象として、以下の日時で利用者のいる場所、そこでの行動を逐次記録した。
 F:平成20年11月14・27日 10:00〜18:00
 L:平成20年12月1・8日 13:30〜16:30
・聞き取り調査:平成20年11月10日〜12月22日に、F(24人)L(18人)の利用者に対して利用状況や意識についてお話を伺った。

3.結果・考察

(1)利用実態の比較からみた意味の違い

 両施設における利用時間(表2)や利用者の行動(表3)、得られたコメント(表4)から、2施設の意味の違いが見てとれる。Fは様々な行為が見られ自由度が高いことから、利用者が居心地のよさを感じ、より多くの人と接する機会となっている。Lはそこに集まった全員でひとつの行為をすることでより親密な関係を築くことができる場である。

(2)利用者にとっての共通してみられる意味

 2施設の利用者にとっての共通する意味として以下の項目が見出せた。
  1)利用者同士の情報や地域の情報を得る場である。
  2)懐かしさや癒しを感じ、 “憩いの場”である。
  3)友人・知り合いが増え、人間関係が広がる場である。
  4)自分から外に出て人と接する機会が増えている。
 これらのことから、多摩ニュータウンに住む高齢者にとって重要な場所であることがわかる。

4.まとめ

 F・Lはそれぞれに運営方法や形態が違い、それに伴って利用者にとっての意味にも違いが見られた。一方は自分の生活に合わせて利用し気軽に関係を広げていく場所、もう一方は比較的同じメンバーで集い関係を深めていく場所という違いである。しかしいずれも、利用者全員でつくっていく場所、人と人また人と街との繋がりをつくる場所となっており、多摩ニュータウンの中で重要な新しい街の居場所となっていたことは共通している。今後このような取り組みが増えることで、自分に合った街の中の居場所を見つけ、人間関係の広がりを感じられる人が増えることが期待される。

(図1)調査対象地(表)
(図2)利用時間ごとの人数(表)
(図3)利用者の行動(表)
(図4)意味の違いに関するコメント(表)



2003-2009, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2009-01-22更新