卒業研究要旨(2008年度)

Sports de Communication 〜昭和の森改造計画〜

2008年度卒業研究 空間デザイン研究室 宮下美穂

1.はじめに

 東京都昭島市駅前から広がる「昭和の森」。
ショッピングセンターや映画館、ホテル、スポーツ施設などからなる市民の為のエリアのはずだが、現在のスポーツ施設エリアは閉塞的で、あらゆる市民がスポーツに親しめる様な環境ではない。どんな人にも開けていて、様々な形でスポーツと触れ合え、市民の生活が豊かになるような場所を提案する。

2.計画

 大きなイベントとしての言わば、“非日常”のスポーツができる競技場+普段の生活の一部として“日常”的にスポーツと触れ合える施設群を融合させた空間を計画する。
 大きな競技場と言う場と、小さな施設群を自由に行き来が出来るように融合させることによって、街に対し競技場が開ける。そこで何が行なわれているのか、どんな人々がそこに集まっているのかを自由に見聞きして、まずは興味を持ち、興味をもったことによって、次は参加してみよう!と言う連鎖反応が生まれる。

(1)競技場

 主にサッカーやラグビー競技を目的とした。観客席は2階建てだが、街の競技場と言う点を考慮し、街の景観を損なわない且つ街に対して圧迫感を与えない高さに抑えた。また、通行の場となるコンコースから外の景色(街の様子)が良く見えたり、直接競技場外の施設へ行けたり、外の施設を使う人と交流出来る場を設けたり、と外の施設とのつながりも持たせた。

(2)競技場に融合された日常スポーツ施設群

 競技場観客席の形状に沿い4つのエリアを設けた。

“Watching” 競技場の観客席をぶち抜いてそびえ立つ展望台エリア。競技場内や街をゆく人々の様子が観察できる。競技場を利用しない人でも自由に出入り出来る造りで、イベントがあってもなくても競技場の雰囲気が味わえる。

“Learning” 競技場の観客席下のスペースを利用した街に開けた資料館エリア。スポーツ関連の資料、写真、映像などの閲覧、展示、鑑賞などが出来る。知らないものに出逢える楽しみを見つけられるよう、大きく開放的な空間を有している。

“Playing” 体育館、プールとカフェからなるスポーツをするためのエリア。街からも競技場からも様子が見えるようガラスを多用したデザインにした。体育館には外部とつながる階段形観客席を配し、プレイする人と外部の人がより近い距離で触れ合えるようにした。

“Doing” 屋外舞台とダンス等を目的とした小ホールからなる、体を動かすことの体験や発信の出来るエリア。“何かしてみよう”と言うキッカケ作りの場になるように街から良く様子が見えるようにした。又、屋根を斜面化且つ緑化し、競技場や駐車場から人が自然に流れて来る様な造りにした。

3.結果

 非日常的なスポーツの為の大きな施設と、日常的なスポーツの為の施設群が融合した事で、大きなスポーツ施設が持つ閉塞感や圧迫感を無くし、街の人たちがスポーツに対して構えずに施設を利用する事が出来るようになった。そして、イベントに来ている人と、周りの施設を利用しに来ている人や街を歩いている人とが、会話をする、一緒に観る、一緒に楽しむ等の交流が生まれる事により、この場所自体があらゆる市民の生活にスポーツへの興味やスポーツと触れ合うきっかけをもたらす事ができる場所になる

(図1)街から体育館、そして競技場を見上げる(写真)



2003-2009, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2009-01-22更新