SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2008年度卒業研究 空間デザイン研究室 中山潤子
(1)現在の商業施設の傾向・特徴を知るため、12ヵ所の商業施設を見学、および以下の文献調査を行った。
・「新建築」1997〜2008年分
・「SC JAPAN」2005〜2008年分
(2)以下の2ヵ所を対象として、利用状況について観察調査を行った。(表1)
・流山おおたかの森S・C (以下、N施設)
11月29日 12月2・17日 10〜20時
・若葉ケヤキモール (以下、W施設)
11月16・23日 12月10・12日 10〜20時
利用人数や平均利用時間(表2、図1・2)を見てみると、N施設は男女問わず多くの世代の人々に利用され利用時間もW施設より多いが、利用時間は比較的に短い。一方W施設は、10代と30代の利用者が多く利用時間はやや長い傾向がある。
そこでの行為を見ると、N施設は待ち合わせなどのため待機している人のほか、荷物整理だけしてすぐ席を立つ人が目立ち、多くの人が回転速く入れ替わりながら利用している。W施設は親子連れや友人との利用も多く、食事やおしゃべり等の行為がよく観察され、ゆったりと時間を過ごしていることがうかがえた。またW施設のみの特徴として、犬を連れていることで見知らぬ人同士の間に会話が生まれたり、偶然友人が通りかかってちょっとした会話を交わすといった場面が見られた。
対象とした2施設の休憩スペースは、いずれも緑を効果的に配置し美しくデザインされていたが、その使われ方や役割には、商業施設としての規模や客層の違い以上に大きな差があると感じられた。N施設は駅前にある大規模な商業施設であり、広範囲から買い物に来た多くの客がその合間に一息つく場所として休憩スペースが使われていた。W施設は周囲が住宅街であり、近所の人々が買い物という目的を持たなくても気軽に訪れ、のんびり過ごしたい時には交流の場所として活用されていた。商業施設内の休憩スペースという役割にとどまらず、周辺の地域に対して開かれた地域の広場のような役割を提供しているのではないだろうか。
利用者にとって居心地の良いと感じる休憩スペースを作り出すためには、そこの物理的なデザインを整えるだけにとどまらず、そこを訪れる人がそこでどのように振る舞いどんな関わりを持つことができるのか、利用者にとってそこが地域の中でどんな「場」になりうるかということまで含めた「場づくり」として捉えて行くことが重要なのではないか。
(表1)調査対象施設の概要
(表2)利用者合計人数
(図1)平均利用時間(グラフ)
(図2)年代別利用人数(グラフ)
2003-2009, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2009-01-22更新