SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2008年度卒業研究 空間デザイン研究室 山下加奈子
プリスクールとは、小学校よりも前の段階、いわば保育園と同じ施設に英会話学校がプラスされた施設の事である。この時期に英語を習わせるということは、どのような環境においてどのようなやり方で英語を身につけさせようとしていて、それがどのように子供に影響があるのかを研究する。
同じ会社の経営する2つのスクールK校・M校を対象とし、1日7時間の生活の流れを2日間観察する(調査日11月19、20日、 12月10日、11日)。また、保護者に対するアンケート調査も行う。
授業中の発言数や積極性にだいぶ違いが見られた。K校では、のびのびと学んでいる様子が伺えたが、M校は全体的に静かで発言はあまりなかった。
K校では他学年の子も先生も一つの教室に集まってみんなで食べており、ネイティブと遊ぶために早くお弁当を食べる子供がいたり、全体的にとても賑やかで先生との会話も多かった。M校は生徒も先生もクラスごとに分かれ、静かにゆっくり食べる子供がほとんどで、会話もほとんど見られなかった。
K校では、走り回る子やネイティブと思いっきり遊ぶ子が多かったが、M校は昼休みの時間もお弁当を食べている子の方が多かった。また、K校では年齢を超えて他クラスと遊んでいる。
保護者に対するアンケートにおいて、スクールに通うことを楽しみにしている子はK校の方が明らかに多い。一方、ネイティブと仲良しと思っているのはM校の方が多い。また、家でも英語を話す子は全体的に少数でM校は一人もいなかった。(図1)
まず、スクールの環境に差があり、クラス数も担任もM校の方が多い。ただし、K校の方が他クラスとの交流が多いが、M校は各クラスごとに孤立しがちな傾向が強い。
先生の子どもへの接し方にも違いがある。K校では休み時間は子供と体を使って思いきり遊び、先生との会話は、自然と新しいことに触れ、子供の会話力を伸ばそうとしていた。先生同士のコミュニケーションも、K校では先生同士やアシスタントとの交流も多く、子ども達を話題にして情報交換が盛んに行われている。M校ではこうした会話は一切ないということであった。
これらの結果から、同じ会社の運営するスクールにも様々な違いがあった。環境や取り組みの違いが、子供達の行動などに影響を及ぼしている。規模の小さいK校の方が、子供達の積極性や交流の活発さ、全体のまとまりが高いように思われる。M校では先生同士のコミュニケーションもなく、子供のことを考えた取り組みというよりも、それぞれ個別に淡々と授業をこなしている印象が強い。
しかし、こうした実体の違いは必ずしも保護者に見えているとは言えないようである。また、「もっと教育をしっかりして欲しい」等をスクールに求めているコメントもみられた。先生と保護者、保護者と子供とのコミュニケーションも十分とは言えない面があるように思われた。先生と子供、先生と保護者がそれぞれコミュニケーションをきちんととることによって子供の実態も理解でき、子供がのびのび学ぶにあたっては、こうした環境をつくる大人が一番敏感にならなくてはいけないのではないか。
(表1)プリスクールの一日の流れ
(表2)各校の人数
(図1)家庭での様子の違い(K校22人、M校15人)
2003-2009, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2009-01-22更新