卒業研究要旨(2009年度)

寒河江Station 〜市民に愛される駅〜

2009年度卒業研究 空間デザイン研究室 板垣友理恵

1. 目的・背景

 私の地元・山形県寒河江市は人口約4.3万人の街である。寒河江駅は数年前に再開発された。その課題として “市の顔となる空間形成とする。市の玄関口として機能するようにする。” などが挙げられていた。しかし、実際に出来上がった駅は人の気配がなく、とても寂しい駅となってしまった。大好きな地元に帰った時、そんな駅に降り立つのは嫌である。そこで、私はそんな寒河江駅を自分の手で新たに再開発してみようと思った。第一は市民に愛される駅を作ること。市民が駅に集うことで生まれる会話・イベント。駅から寒河江を活性化するという寒河江の新たな試みになればいい。

2. 制作対象

◇対象地:山形県寒河江市駅・駅周辺
◇対象地の現状:駅利用者の大半は朝・夕の通学に利用する高校生。電車に乗る以外の利用はない。駅周辺には日常生活で利用できるような施設・お店がほぼない。
◇対象者:主な対象者は寒河江市民→駅まで徒歩可能な距離に住む市民。(駅より半径約1.5km圏内・時間約15〜20分)市民に愛される駅=市民が気軽に集える駅を計画するため、対象者は徒歩で気軽に行ける範囲の寒河江市民とする。

3. 寒河江駅はこうなる

『気軽に行ける、行きたくなるような市民の集いの場所となる駅へ』
 電車に乗る目的でしか作られていない現在の寒河江駅。日常生活で利用できる空間・機能がないのだから当然である。そこで、気軽に行ける憩いの場所がない市内に、寒河江の中心として最近イベントも盛んに行われつつある駅を生まれ変わらせ、これをきっかけとして日常から寒河江の、市民の中心となる駅をつくる。

4. 制作概要

 駅前の広場は四角のブロックを並べた構造。一定面積のブロックの連続・ブロックごとの高さの変化で、それぞれのブロックからの視線の違い、自分で上り下りするという楽しさを出す。
 ブロックは「sky〜時間変化からの訪れ〜」「green〜遊びからの癒し〜」「sun〜買物からの集い〜」の3つからなり、自分の使用目的によりどこからでも出入り可能にする。

『sky→空の色(時間)の変化とともに空間利用・人の出入りが変化。』
『green→緑ある公園のように癒しを感じる。』
『sun→全ての中心となっている太陽。太陽に向かって全てが集まる。人が集まる。』
 駅機能は欲張らず、改札・待ち合いなどなるべくシンプルなものを集めたが、あくまで『駅』を代表する場所として中心に・どの空間からもアクセス可能にした。

5. 寒河江に新しい楽しさを

 駅前の広い空間にブロックが起伏し、連なって広がっている。この空間に一回入ってしまえば街中とは違う別の世界に入り込める。歩き進めれば視線の違いを感じ、隣りのブロックに行ってみよう!と興味をそそられる。買い物や図書館、朝市など沢山の機能があることも楽しさの一つである。駅空間は、今回の制作では電車利用を目的としていないため、シンプルな機能にし、駅前に広がる空間を充実させ、『駅』という場所に足を運びたくなるものにした。
 寒河江駅は田舎特有の、車生活が基本の日常から、徒歩でのんびり訪れられる、ゆっくり楽しめる寒河江の新しい場所となる。

(図1)敷地全体図(写真)
(図2)メインアクセス方面(写真)



2003-2010, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2010-01-25更新