卒業研究要旨(2009年度)

コミュニケーションの場としての商店街 〜豊田商店会を対象として〜

2009年度卒業研究 空間デザイン研究室 木下香

1. 目的

 個人商店の集まる商店街がコミュニケーションの場としてどのような役割を果たしているのか、豊田商店会を対象とし駅周辺の特徴や歴史をふまえながら商店街の存在意義を見出すことを目的とする。

2. 調査概要

 調査期間は2009年11月〜12月。調査内容はJR中央線豊田駅を中心とした半径約300mの範囲で建物の高さ、店の数、種類調査。文献や地形図で駅周辺の歴史調査。駅南口の豊田商店会を対象にヒアリング調査を行った。(商店街26件中13件)

3. 北口と南口の特徴

 現地調査から北口は主に中高層建物で構成されているのに対し、南口は全体的に低層建物で構成されている。(図1)店舗数においても北口が多く、豊田駅は北口が栄えていることがわかる。しかし、商業地、住宅地として先に発展したのは南口であった。また、現在南口は区画整理、再開発中である。

4. 豊田商店会の現状と意義

 ヒアリング調査から商店会の現状と意義について以下の項目が見出された。(表1)

(1)商店街の現状

 昔は現在よりも多くの店がそろい活気があったように思われるが、現在は決して活気はなくさびしさがただよっている。商店街に対しては、店の人によってもっと元気に活性化してほしいと思っている人と、現状を続けられれば良いと感じている人がおり、考え方に違いがあるようだ。

(2)町における商店街の役割

 40年以上続けているお店が多く、また家族や夫婦で自宅を兼ねて営業している所が多いことから、いつ訪れても変わらずに同じ人がいるという安心感につながるのではないか。また、それぞれのお店が自分の店のことだけではなく店の周辺の様子や他の店同士の関係など商店街全体に意識をはたらかせていることでコミュニケーションのかたちを保ち、時として子ども達の遊び場や成長の場の役割も果たしている。

(3)客にとって商店街がどのような場所/存在なのか

 お客さんにとっては、商店街は単に消費の場としてだけではなく、体調や子供の話、趣味など様々な会話や情報交換が行われており、それによって個人的な関係を築くことができる場となっている。また、店の人と客とのコミュニケーションの場としてだけではなく、お客さん同士が店で知り合い交流がうまれるなど、客と客とのコミュニケーションの場にもなっているようだ。

5.結論

 現状としてさびしさのある南口の商店街だが、地域の人々にとっての大切なコミュニケーションの場があることがわかった。この存在が果たしている役割は客にとっても地域にとっても大きなものであると言える。今後再開発によりこの場が失われた場合、現在のコミュニケーションの場、かたちを失ってしまうことになる。利便性や効率性を追求することで失われるものも大きいのではないだろうか。

(図1)豊田駅周辺の建物の高さ
(表1)ヒアリングから得られたコメント



2003-2010, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2010-01-25更新