卒業研究要旨(2009年度)

サードプレイスの観点からみる
多摩ニュータウンの「街の居場所づくり」に関する研究

2009年度卒業研究 空間デザイン研究室 松田理美

1 研究の背景、目的

サードプレイス(以下TP)は家でもなく、学校や職場ではなく、行きつけの居酒屋やカフェのような空間である。多摩ニュータウン永山、諏訪地域は1971年に入居が始まり、最も古い地域であり、住人の高齢化は進んでいる。そういった中で、住人のコミュニティ構築を目的とし、入居者が気軽に訪れることのできる居場所づくりの試みが行われている。この試みが、福祉亭(以下F亭)、ふらっとラウンジ(以下FL)、ぶらっとラウンジ(以下BL)である。この試みについて、TPを構築する必要要素に焦点を当て検証し、これを目的とする。

2 調査概要

対象は50〜80代の利用者F亭15名、FL8名、BL7名計30名、11〜1月にインタビュー調査を行なった。

3 TPの必要要素からみる居場所づくり

TPの概念を提唱したオールデンバーグによると、TPにはいくつかの必要要素がある。(1)訪れやすく受け入れられること、(2)中間地帯であること、(3)平等であること、(4)主たる活動が会話であること、(5)気質や性質が陽気で楽しいこと、(6)常連がいること、等である。

3-1 中間地帯であること

「好きな時に来て好きな時に去れる場所」
好きな時に来て去れる場所とは、利用時間や活動、そこでの関わりの自由度と関わっており、それにより利用者の生活の幅が広がり、その価値は高い。F亭の利用者はそれぞれ利用頻度や利用時間が違い、時間の自由度が高い。次に図1を見ると、F亭は活動の幅が広く、FL/BLは活動が限定されていることが分かる。また表2から、F亭は利用者同士の関わり方が多様であり、幅が広く、FL/BLは家族同様に一定の濃い関係を築いており、利用者同士の関わり方の幅が狭いことが分かる。

3-2 平等であること

「皆に開放され、立場や地位の違いに限定されない」
皆に開放されているとは、様々な人の様々な利用のし方、関わり方に寄らず、平等に受け入れられることである。図2からF亭は仕事の合間に短時間の利用をする人もいれば、毎日のように長時間利用する人等がおり、様々な人が様々な利用の仕方をしていることが分かる。一方同じような生活や立場の人が来ているFL/BLは、ラウンジの利用割合が一定であり、多様性に欠けていることが分かる。

3-3 常連がいること

TPの雰囲気は常連によって作られるが、どんな常連もかつては新顔であり、新顔を受け入れることが重要である。FL/BLは新顔がいなく常連ばかりだが、F亭は常連の中にも新顔が受け入れられている。

4 まとめ

FL/BLはTPの必要要素が欠けている部分はあるが、F亭はそれを多く取り入れている。TPのような場が多摩ニュータウンに作られることは重要であり、今後もっと評価され作られていくことで、より豊かな生活を送ることができるのではないだろうか。

参考文献 Ray Oldenburg,The great good place,1989

(図1)主な活動の違い
(図2)個人の日中の過ごす場所の割合(F亭・FL/BL)
(表1)利用者同士の関わり方のコメント



2003-2010, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2010-01-25更新