卒業研究要旨(2010年度)

武蔵野市テンミリオンハウスの魅力に関する研究

2010年度卒業研究 空間デザイン研究室 平松清美

1.はじめに

 武蔵野市では地域での見守りや社会との繋がりが必要な高齢者などの生活を総合的に支援する「テンミリオンハウス事業」を実施している。この事業では地域のNPOや地域住民が年間1,000万円を上限とした市の補助を得て、現在7ヶ所の施設を開業しており、いずれも地域と密着した小規模な施設となっている。こうしたテンミリオンハウス(以下、TMH)果たす役割と魅力を明らかにすることが本研究の目的である。

2.調査方法

 まず、7ヶ所の全てのTMHを訪問して、運営者にヒアリング調査を行い、TMHの実情を把握した。その上で表1の2カ所を調査対象として、利用者に対するアンケートや行動観察調査を行った。

3.結果・考察

 調査結果から、利用者にとって、TMHに以下のような魅力があることが見出された。

(1)コミュニケーションの場としての魅力

 約90%の利用者が友人・知人が増えたと感じている。TMHを初めて利用する者でも楽しく気軽に話が出来る。TMHは利用者にとって、同年代で話が合い、マナーを守りながら交流できる場所である。

(2)心が休まり、安心出来る場の魅力

 一人暮らしの高齢者にとって、やることがないと一日中、家にこもりがちになってしまう。子供と同居していても誰とも話さなかったり、家にいることで家族とかえって、険悪な関係になることもある。TMHは高齢者に外出のきっかけを提供し、そこでは気が合う人たちと話が出来たり、自分がやりたいことも出来、安心できる場所となっている。

(3)様々な情報が得られる

 TMHでは利用者同士が地域の情報を交換したり、年金などの重要な書類について話し合う機会がある。家は得られにくい様々な情報を得られる場所でもある。

(4)食事を楽しむ場の魅力

 家庭的な味付けの食事やホームメイド菓子が味わえる。安値で美味しく、しかも楽しく提供される食事は利用者にとって、大きな魅力となっている。

(5)スタッフの対応の良さ

 規模が小さいこともあり、スタッフは利用者1人1人に気をつかい、親切で友人のような対応をする。利用者が来ると、スタッフ全員が声をかけ、わからないことがあれば、優しく対応してくれる。

(6)空間の魅力

 住宅規模のTMHは周辺住宅に溶け込んでいて、緊張しないで過ごすことが出来る。室内のインテリアも利用者が家にいるようにくつろぐことが出来る。

(7)身近な場所の魅力

 約50%の利用者が5〜10分以内とTMHの近くに住んでいる。中には20分以上かかる利用者も多くいて、時間をかけてTMHに来たい場所であることを示している。

4.まとめ

 利用者にとって、TMHは規則に縛られることがなく、自分の意思で一日自由に過ごせて、美味しい食事を食べながら、気が合う人たちと楽しくおしゃべりができる。利用者にとって、テンミリオンハウスは「心地よい居場所」を提供している施設である。

(表1)対象施設概要
・川路さんち
 調査期間:平成22年12月14日〜平成23年1月7日
 調査内容:アンケート調査、行動調査(10人)、インタビュー調査(9人)
 川路さんちではプログラムは1週間に1回のみ行っている。プログラムの内容は手芸、手話、コーラスなどがある。プログラム参加者数は1日で約10人。
・くるみの木
 調査期間:平成22年12月18日〜平成23年1月8日
 調査内容:アンケート調査(23人)、行動調査(19人)
 くるみの木ではプログラムを毎日行っている。プログラムの内容は体操、コーラス、ガーデニング、麻雀などがある。プログラム参加者数は1日で約15人。
(図1)テンミリオンハウスを利用した印象(グラフ)



2003-2011, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2011-01-28更新