卒業研究要旨(2010年度)

ART town “多摩テク”

2010年度卒業研究 空間デザイン研究室 遠藤麻里絵・奈良崎杏美

1.背景・目的

 東京都日野市に所在するテーマパーク、多摩テックは、入場者数の減少や、不況などによる原因により、2009年9月30日を以って営業を終了し、閉園となった。しかし、長年多くの人に愛され続けてきたため、なくなったことに寂しさを感じる声もある。そのため、跡地利用として、どこか一部の団体が所有するのではなく、これからも多くの人々に愛され、利用される施設となるべく、新たな施設を提案した。それが「観る・聴く・作る・見せる・奏でる」ことが出来、年齢や男女問わず、誰もが楽しめる芸術の複合施設ARTtown“多摩テク”である。

2.コンセプト

「体験型」

 美術館でプロの絵画に触れあと、すぐ近くの工房(ワークショップ)で同じ技法を学び、自ら作品を作り上げることができたり、音楽ホールでプロの演奏家と一緒の舞台に上がれたり、映画館では映写を体験が出来るなど、観たり聴いたりするだけでなく、自らが作り、奏で、見せることで男女や年齢問わず楽しむことが出来、そこにいれば1日過ごすことの出来るような施設を目指す。

「4つの自然」

 ストレスを抱えている人も普段の生活から離れ、改めて「自然」というものの美しさを感じながら芸術に触れることで、日々のストレスを和らげてほしい。その思いから、高台で緑豊かな環境を活かし、「水」「花」「森」「光」をテーマに空間を作り出した。美術館のある「水」の空間から始まり、蔦のようなギャラリーやショップを抜けると、「花」の音楽・劇場ホールへと辿り着く。映画館のある「森」を歩いて帰り、ARTtownの全貌を眺められる「光」の展望台が執着地点である。

「2つのメイン」

○美術館:メインの一つとなる美術館は水が湧き出ているイメージ。生命の源であり、植物には欠かす事のできない水を多摩テクの自然の源として表現した。

○音楽・劇場ホール:ホール内は、演奏者を囲み、聴衆も参加しやすい円形とした。外観は花の形をモチーフにし、ホール周辺も含む全体で、花の空間をつくった。

3.日野に新たな喜びを

 1つの場所で様々な芸術を体感し、そこで1日過ごすことができるような施設が実際にあまりないため、地域の人だけでなく多くの人に興味をもたれる場所でありたい。また、地域の人や大学の団体などの発表の機会となるようなホールやステージ、ギャラリー等も設けるため、プロの芸術を体感するだけでなく、自分たちも参加できる形とすることで、多くの人が身近に感じられる居場所となることを期待する。普段から芸術に精通していない人にとっても、その雰囲気や自然を感じるために散歩に訪れるなど、誰もが気軽に利用できる芸術村を実現したい。日野市に新たな喜びと笑顔をもたらし、活気に溢れる街となることを目指す。

(図1)敷地全体(写真)
(図2)美術館(写真)
(図3)音楽ホール(写真)



2003-2011, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2011-01-28更新