卒業研究要旨(2010年度)

団地ノキオク

2010年度卒業研究 空間デザイン研究室 高柳美穂

1.目的/背景

 ひばりが丘という地名は、1959年、33万平方メートルの膨大な敷地に誕生したひばりが丘団地とともに生まれた。当時のひばりが丘団地は、ひばりが丘において中心となる場所であった。また、活気で溢れているとともに、自然が多くひばりが丘の緑の拠点となっており、住民の憩いの場所にもなっていた。これらは昔から続く、人とともに時間を重ねてきた団地の風景、歴史である。
 しかし、高度成長期を象徴するマンモス団地も現在では、建物の老朽化、住民の高齢化が進み、時代遅れと呼ばれるようになった。時代とともに、人々の暮らしは変化していく。団地も変化していかなくてはならない。当時のようにひばりが丘の中心となり、残された風景を継承しながら長年団地で暮らしを重ねてきた人々、新しく暮らす人々、地域の人々が共に暮らす、当時の面影を残しつつも、今までとは違う、新たな団地を提案する。

2.計画

 既存の建物を生かしリノベーションする部分と、新しく建て替える部分で構成する。そして、団地の中心となる広場を配置し、各ゾーンを繋げる。
 敷地の緑を生かし、自然とふれあえるよう公園を設置したり、店舗を散らばらせ、住民だけではなく地域の人々も呼び込む。団地全体に空中回廊を巡らせ、住民以外の人々も気軽に歩けるようにし、上から団地を眺めることができる。団地の中で人と人、自然と人の「繋がり」を持たせる。

【昔ながらの団地の風景】

 既存の建物をリノベーションし、昔の面影を残しながらも、現代のニーズに合わせた設計をする。建物は現代的であるが、生活の様子は昔から変わらず、懐かしさを感じさせる。視覚から団地の風景を読み取る。

【新たな団地の風景】

 不規則に並べられた建物と建物の間には様々な隙間が生まれ、道になったり、庭になったり、隠れ家になったり、多様な空間となる。庭先で、通りすがった近所の人に挨拶をしたり、ちょっと話をしたり、テーブルを外に出し食事をしたり、そこで様々な人が出会い、交流が生まれる。人は「個」の中で暮らすのではなく「共」の中で暮らしていく。現代のニーズに合わせながらも、ご近所付き合いなど昔ながらの団地の良さを残していく。

3.これからの団地

 団地で暮らす人も地域の人も、団地の中でそれぞれ想い想いの道を形成していく。そこで様々な発見や出会い、交流がうまれる。日々新しい発見をし、新しい工夫を見つける。そして、自分たちの生活の仕方を再発見していく。道は「遊び場」であり「庭」であり「生活の場」であり「情報交換の場」である。そこで近隣同士のコミュニケーション、地域のコミュニケーションが生まれ…コミュニケーションの輪が繋がっていく。団地に根付いた環境、習慣、人々の想いは変わることがなく、地域のかけがえのない財産である。団地の「キオク」は受け継がれ、今日も新しい「キオク」が刻まれていく。

(図1)配置図
(図2)団地の風景(写真)



2003-2011, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2011-01-28更新