卒業研究要旨(2011年度)

座りたくなる道 〜自由が丘九品仏川緑道におけるケーススタディ〜

2011年度卒業研究 空間デザイン研究室 武田奈生子

1.目的

 自由が丘の九品仏川緑道には多くの人が集まっており、休日には設置されているベンチに座れなくなる程である。本研究ではこの緑道を対象として、人がどのような場として道を利用していているのか、なぜ人が集まるのか、その道の魅力について考察する。

2.調査方法

 九品仏川緑道の自由が丘駅周辺約230mの範囲を対象とした。緑道には、中央部分に等間隔で木が植えられ、106脚のベンチが配置されている。両側には商店やマンションなどが並んでいる。(図1、2)表1のような調査を行った。

3.結果、考察

 緑道では、平日でも午後には70人近く、来街者の増える休日の午後には130人もの人が座っており、平均するとベンチ1脚に1人以上となっていた。

 来街者の様子は、平日と休日では違いが見られる(図4〜6)。平日は1人で来る人が多く、20-30代の女性を除くと各年代が平均的に訪れている。休日になると20-30代の男女および子供が増加し、また家族連れやカップル等のグループが増えている。休日にはこうした若者層が買い物や遊びに集まってきていると思われる。一方、1人で来る人、特に年配層は、平日・休日での来街状況や行為に大きな差は見られず、またボーッとしたり読書、煙草など、グループよりも多様な行為が観察された。観光目的ではなく、日常的に訪れて自由に過ごしていることが示唆される。

 座る場所に注目すると(図3)、若者層、子供、年配者では座る場所に違いが見られる。また、休日に特に人が集中する場所ともあれば、平日休日に関わらずコンスタントに座られる場所があるなど、緑道の中でも場所による特徴がある。

4.まとめ

 緑道での過ごし方を、横軸に「日常性ー脱日常性」、縦軸に「目的性の強弱」をとって、その特徴を整理した(図6)。まず、買い物や食事、デートなどで若い世代などが訪れる観光的スポットとしての姿である(左下)。街の住人が買い物ついでに通りかかったり、ふと休んだりする日常的な生活環境としての姿もある(右下)。さらに、サラリーマンやOLなどが仕事や勉強の合間などに一息つくような立ち寄り場所や(左上)、年配者などがゆったり滞在する普段の居場所としての姿もある(右上)。九品仏側緑道は、様々な目的に応じて、また日常的/非日常的な場面に至るまで、いろんな人の多様な座り方を可能にしている。このような異なる質が共存していることで、外に開かれた側面と、内で落ち着ける側面の両面を持つ道であることが分かった。おしゃれな場所として新しい情報や人が引きつけながらも、落ち着きを保ち生活の場所としての秩序を維持している。

(表1)調査概要
(1)緑道の行動調査
2011.10.29、11.4 10:00-14:00
どのような行動をしているのか1時間ごとに利用者の属性や行為を記録した。
(2)カフェの観察調査
緑道沿いの4つのカフェを対象とし、オープンから1時間毎に客の出入りをカウントした。
(3)カフェについての意識調査
20代女性9人、50代女性1人を対象として、カフェ4店舗に赴き、店のイメージや入りやすさ等を訪ねた。

(図1)調査対象地の様子(写真)
(図2)調査対象地
(図3)場所毎の座っている人数(休日合計)(グラフ)
(図4)来街者グループ(グラフ)
(図5)来街者の行為(グラフ)
(図6)来街者の属性(グラフ)
(図7)緑道の様々な役割(グラフ)



2003-2012, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2012-01-29更新