卒業研究要旨(2012年度)

ゆかし 〜小平団地再生計画〜

2012年度卒業研究 空間デザイン研究室 藤原理沙

1.はじめに

 当時、最先端の設備を備えていた団地は若い夫婦や子育て世帯にとって憧れの住まいだった。それが今や時代の変化と共に空洞化・居住者の高齢化・建物の老朽化・現代に合わない間取り…と、いつしか団地は憧れの住まいではなくなっている。時間の経過により元からの居住者同士のコミュニケーションと敷地内にある自然は立派に育ち豊かなものとなっている。しかし、一方で新しく入ってきた居住者や周辺地域には何故だが冷たく感じるように思える。 そこで、そこに“ゆかし”を入れ再計画を仕掛ける。

2.対象団地

【対象棟】
3-1・3-2・3-3・3-4棟
戸数:200 敷地面積:139,000m2m2

3.計画

全体計画

 団地の入口からはじまるものがたり。
長い時間をかけての計画。少しずつ変わり育っていく団地にするため、“はじめ”の意味を込めて団地の入口に近いこの4棟を対象棟とする。
 周辺地域とのつながりや団地と周辺地域に活気をつける。
集まって住むことによって共に生きる力を感じることができ、人・時間・場所に個の空間をきちんと持ちつつ決して閉鎖的すぎにはならない。
 世帯数は半分に。全ての住戸プランを変えて一戸一戸に個性と面白みを与える。それにより住む人に選択性を生み出す。この4棟から居住者自身のこう住みたい・住んでいきたいと思わせられるような団地を目指す。“ただ住む”だけに終わらず居住者が育てていくゆかし溢れる団地へ。

棟計画

ゆふ棟【空間に空間を埋め込む】
 2700×2700の正方形を間取りに埋め込んでいく。
それはキッチン・水周り・階段・部屋・ベランダと用途はさまざま。空間に空間を埋め込むことにより上下階のつながりや外と中に曖昧な境界が生み出すことが出来る。

もえぎ棟【1戸=1庭】
 団地特有の余剰空間があるにも関わらず、そこは個で自由に扱うことは出来ない。ならば、1戸につき1つの庭を設ければ自由に扱うことができるようになり、庭から生まれるコミュニケーションによって隣人など上下階だけではなく違う棟の人とも庭をきっかけに顔見知りになれる。

えにし棟【南側アクセスと土間】
 ベランダの使い方を「玄関・交流」という使い方に変える。もともとのベランダの幅を広く増築し上下左右に階段や橋で繋げ各戸へと行く…途中、友人に会って友人宅へ少し寄り道。靴は脱がずに気軽に話を出来る。また、土間という非日常空間を設けることで住み方に自由性を生み出す。

よすが棟【壁を曲げる】
 団地という固い表情に面影を少し残しながら柔らかくするために1〜3階と4〜5階の柱はそのまま残し壁を曲げる。1階の空いたスペースは集いの場として。2階は商業施設や団地の自治会や集会場として利用。

4.結果

 “ゆかし”とは心が対象物に惹かれてゆく様を表す言葉。いろんな「〜したい」という意味でそれらは好奇心や興味。私たちはゆかしを日々噛みしめ大切にしながら毎日を暮らしているかもしれない…ならば、一人一人がゆかしの心を持つことにより次々と新しいこと・もの・ひとを見つけ出会うことが出来る。4棟のスタイルを変え、居住者の生活に選択性を生み出し好奇心や興味を持たせ、想い想い自由に楽しく様々な世帯が共に住み続けることができる。
 全ては住む人たちの“ゆかし”から…そんな団地となる。

(図1)対象団地:UR都市機構 小平団地
  所在地:東京都小平市喜平町三丁目 総戸数:1766戸
(図2)模型写真



2003-2013, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2013-01-23更新