卒業研究要旨(2012年度)

洪福寺松原商店街が作りだす魅力に関する研究

2012年度卒業研究 空間デザイン研究室 稲村真由美

1.研究目的

 横浜市にある洪福寺松原商店街は、近隣住民中心に平日は約一万人以上、休日は約二万人、年末には一日約十万人が押寄せる賑わいと活気に満ちた商店街である。周辺には幾つかの商業施設が存在し、どこにでもある市街地の住宅街に位置しながらも、なぜ多くの人で賑わいつづけているのか、その商店街空間が作り出す魅力について見出すことを目的とする。

2.調査方法

 洪福寺松原商店街を対象に、以下の調査を行った。(1)松原振興組合理事長へのヒアリング調査、(2)時系列調査(商品と人の動きを1時間ごとに記録、調査日:10/17水・10/20土)、(3)フィールド調査(特に気になった場面の様子のスケッチ)、(4)来街者へのアンケート調査(調査日:12/7金・8土14金15土・平日23人、休日25人)。

3.洪福寺松原商店街の様子

 10時頃、段ボールなどに入った商品や陳列棚が、店舗前の街路へ大きく溢れて並べられ、売れ行きに合わせながら商品陳列は修正されていく。12時から14時頃、来街者数のピーク時間を向え、18時には売り切った段ボールは撤収され閉店する。来街者は近隣住民が多く、商品の安さだけではない、非日常的な雰囲気を好んで訪れている人が多い。

4.洪福寺松原商店街の魅力

 商店街の環境要因をモノ・コト・ヒト・サービス環境に分類し、来街者の関わり方から、その魅力を分析した。(図2)
 まず、商店街の様々な取り組みによって、安全で便利に安く買い物できるという消費者ニーズが満たされている。しかし、それ以外にも多様な要素が関わり合って松原商店街の魅力が形成されている。
 多種多様な商品が日々日々異なる形で陳列され、時間と共に配置が変化していく。受身的に提供されるのではなく、自ら探索し、商品を見つけ選択するという能動的な関わり方を構築する。また、目の前で繰り広げられる非日常的な光景や、賑わいの場に居ることで、興奮と期待感を覚えたり、五感を刺激する要素がいくつもあり、さまざまな情報に触れられる。道では、溢れ出した商品を通して店員との直接的なやりとりだけでなく、日常の何気ない会話があちこちで見うけられ、間接的な情報も得ることができる。店内に入らなくても、開かれた地域のコミュニティーとしての役割を果たしている。
 整ったサービス環境の中で、単に、与えられる商品を購入するのではなく、そこでしか得る事の出来ない体験や情報、それぞれの要素がつながりを持つことで、相乗効果となり魅力が増すと考える。この繋がりこそが松原商店街に多くの人を惹きつける魅力ではないだろうか。

(図1)洪福寺松原商店街
  ・近隣型商店街 ・横浜市保土ヶ谷区宮田町 ・東西248m南北189mの十字型の道なりに形成 ・店舗数89
(図2)松原商店街の魅力分析



2003-2013, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2013-01-23更新