卒業研究要旨(2012年度)

日常の暮らしが滲み出た街並みの魅力 〜 「なんかいいな」の風景 〜

2012年度卒業研究 空間デザイン研究室 馬瀬戸杏美

1.はじめに

 日本の街並みは魅力に乏しいと評価されがちだがその街並みにも単なる美しさとは違った魅力があると考える。この魅力を「なんかいいな」と名付け、利便性や美しさを求めてつくられた魅力とは異なる視点から日本の街並みにみられる魅力の存在を認めたい。

2.研究方法

 景観整備がとくに整っていないとされる住宅地を主とした一般的な街並みから「なんかいいな」と感じられた55カ所の風景(図1、2)を対象にし、その風景から読み取れる魅力の要素を図3のように抽出した。そのうち6カ所は8人の被験者にも協力依頼をし、抽出された要素をKJ法により分析した。

3.「なんかいいな」の正体と価値

 KJ法による魅力の要素分析を図4にまとめた。
 全体を分類すると「風景と自分自身の関わりによる魅力」「風景の背景に存在する他者が関係する魅力」の2つに分けられ、この中でも風景から得られた材料をもとに想像や連想の広がるものが「なんかいいな」と感じさせる主な要素になると考える。これらは単独ではなく、それぞれに関係し合って魅力となるものも多いようだ。
 これまで評価されることのなかった何気ない日常の風景には、調和や美しさのようにそれだけで完結することのない「広がり」の価値が存在すると考える。過去・未来との関わりや自身の生活する社会を認知させられるなど、単なる景観の良さとは異なる評価ができるのではないだろうか。

(図1)先の見えない道(写真)
(図2)夏休みを感じる上履き(写真)
(図3)要素抽出作業例
(図4)KJ法による魅力要素の分析



2003-2013, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2013-01-23更新