卒業研究要旨(2012年度)

今日のできごと 〜渋谷川再計画〜

2012年度卒業研究 空間デザイン研究室 坂上真緒

1.はじめに

 渋谷には渋谷川という川が存在する。渋谷川はかつて童謡「春の小川」の舞台にもなった場所とされており、名のある川である。昭和20年代以降、渋谷川沿いには小規模な機械金属工場を中心に、工場地帯として活気づいていった。反面、多くの人々の生活は川に背を向けたものとなり、川を排水路として利用したため、川は生活排水や工場排水の捨て場となって汚れ続けた。そのため、現在の渋谷川は、川を隠すかのように沿川にはビルが建ち並び、影へと追いやられてしまっているようである。川が追いやられたように、渋谷川周辺は渋谷の賑わいのある雰囲気は無く、人気も少ない、静寂した暗い印象を与える。
 そこでかつての活気を取り戻し、渋谷に人が思い思いに過ごすこのできる「居場所」を提案したい。

2.対象敷地/周辺環境

東京都渋谷区渋谷川周辺
 渋谷駅から恵比寿駅までを結ぶ明治通りと東急東横線線路の間に位置し、JR渋谷駅新南口からアクセスできる。東には実践女子学園や青山学院などの学校があり、南西は代官山へと通じている。
 渋谷川は現在ではほぼ全て暗渠化されて下水道として使われ、渋谷川には流入しなくなっている。沿川には高さのあるビルが川に背を向け建ち並んでいる。

3.計画

-- 川 --

・川が下ると共に物語性を持たせる。
・現在ある川を暗渠化し、新たな渋谷川を計画する。そうすることで、水面が人と近くなり、自然を身近に感じ取ることができるようになる。また、形状も現在の直線的なものだけでなく、蛇行させたり分岐させたりと、変化をつける。

-- 街 --

・渋谷へ買い物に来る人、学校に通う学生、仕事場に通勤する人、様々な人が行き交う場とする。
・機能のない場所を設ける。そこは道になったり、一息休める場所になったり、フリーマーケットが開かれたり、話し合いの場となったり、その日その日で変化する場所となる。

-- 壁 --

 壁に高低差をつけることで、多様な空間がうまれる。高い壁で挟まれれば、一つの道が一つの空間として成り立つ。低い壁は仕切りとなり、周りを見渡すことができ周囲の雰囲気を感じ取ることとなる。
 そして壁を層に重ねれば道ができ、あらゆる動線がうまれる。一つの道を歩いていると、広い空間が出現したり、路地のような道になっていたり、歩くのに連れ様々な居場所が表れる。

4.考察

 様々な居場所をつくることにより、思い思いの時間を過ごすことができる。そこでは常に新しいたのしさや幸福感がうまれる。そうして利用者が目的を果たすためだけでなく、自ら「居場所」を求め、この場所へ訪れるようになる。そして、この場所はかつての渋谷川の活気を取り戻し、渋谷川という自然の財産はこれからもここに在り続ける。

(図1)敷地周辺地図
(図2)模型写真



2003-2013, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2013-01-23更新