卒業研究要旨(2014年度)

歩きたくなる路地の魅力

2014年度卒業研究 空間デザイン研究室 木下友里

1.はじめに

 路地には、狭さ故に生まれた魅力や空間の使われ方がある。本研究では、様々なタイプの路地から読み取り、歩きたくなる路地の魅力について考えていく。

2.研究方法

(1)現地調査

 住居系、商業系など含め30箇所の路地を実際に訪れ、現地調査を行った(表1)。平面図・断面図を作成し、その他の路地情報をデータとしてまとめた(図1)。

(2)路地の評価実験

 路地好きの人、歩くことが好きな人を対象に、15名の被験者に実験を行った。路地写真50枚を「歩きたい」または「歩きたくない」の5段階評価で分類し、グループごとに比較をし、評価コメントを得た。

3.研究結果

(1)路地のタイプ

 現地調査を行った路地を「先が見える−先が見えない」「、入りやすい−入りにくい」という2つの軸によって4タイプに分類した(図2)。住宅系路地は、先が見えづらく、生活感があるために入りづらく、日常の商業系路地は先が見えることで賑わいを感じ、入りやすいものが多く見られた。飲食店街の路地は先が見えていても入りづらい一方で、先が見えなくても入りたくなる、非日常的気分を感じられる路地もあった。

(2)路地の評価

 評価実験により得たコメントから、図3のような評価の構造図を作成した。評価の高い環境の質として、
 (1)人が関わって作り出している生き生きした環境であること。
 (2)きっかけや期待感に満ちた人を誘引する環境であること。
 (3)適度に囲まれた統一感のある環境であること。
 (4)多様な要素が混在し、変化のある環境であること。
の4点が見出された。そこは、非日常でありながら馴染みやすいという感覚と、自ら発見した自分だけの環境であるという感覚を引き起こす、一つの街のように感じられるのではないか。その結果、様々な想像を巡らせたり、その環境と関わってみたくなる、足を踏み込みたくなる世界として感じられるのではないか、という仮説を導き出した。

4、まとめ

 路地には様々なタイプがあり、それが人に与える印象も様々である。ただそうした視覚的な印象評価にとどまらず、想像や行動、関わりが誘発されるような、自分がその空間に参加して楽しみたくなることこそが、歩きたくなる路地の魅力ではないだろうか。

(表1)調査対象路地
 下町・住居系路地 4カ所
 住商混在路地 10カ所
 飲食店街の路地 5カ所
 飲屋街の路地 6カ所
 ビル街の間にある路地 5カ所
  合計 30カ所

(図1)路地データの例初音小路(谷中)
(図2)路地のタイプ分類
(図3)評価実験による路地の魅力



2003-2015, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2015-01-25更新