卒業研究要旨(2014年度)

勉強カフェから読み取る新たなコミュニティの形成

2014年度卒業研究 空間デザイン研究室 小林あづさ

1.はじめに

 勉強カフェとは、学びを楽しむ大人のためのカフェのような自習室として運営されている施設で、都内を中心に全国に12店舗が常設されている。その名の通りに勉強をする場所としての利用ももちろん可能だが、最大の特徴は、自習だけでは得られないような勉強仲間をつくるために利用者同士が交流する機会が設けられている事だろう。そこでの人と人との関わり方から、勉強カフェの独自のおもしろさや魅力を見出し考察していく。

2.研究方法

(1)行動観察調査:

 2014年12月27日(土)の10:00〜21:00に実施。対象者の行為を30分ごとに記録した。

(2)ヒアリング調査:

 2014年11月〜12月の間、勉強カフェを利用するにあたっての意識について対象者12名にヒアリング調査を行った。
 ・対象地:勉強カフェ渋谷北参道スタジオ
 ・対象者:勉強カフェ会員と運営スタッフ

3.勉強カフェの実態

 時間ごとの利用料金を払うことで誰でも利用することができるが、会員であれば定期的に開かれる外部講師によるセミナーへの無料参加のほかにも自分が中心となり勉強会を運営することも可能であり、より交流の機会が増える。勉強会の内容は、資格取得に関わるようなものだけでなく参加者全員で楽しみながら交流できるものなどさまざまである(表1)。こういった会のあとに会員同士で飲みにいったり、みんなで食事に行くことを勉強会の目的としていたりと勉強カフェ以外の場所でも一緒に過ごす動きが見られた。

4.結果と考察

(1)行動観察調査の結果

 この日はフルーツティーを囲みながら会話を楽しむ会が開かれており、会員5名が参加していた。総数30人前後の人に利用されていたが、その中でも読書や新聞を読むなど通常のカフェのような過ごし方をする人もいれば朝から営業終了時間までの9時間近くを勉強時間に費やす人の姿も見られ、人によって異なる目的を持って訪れ多様な過ごし方をしていることが分かった(表2、図1、図2)。

(2)ヒアリング調査の結果

 勉強カフェに通う目的として最も多くあげられた意見が「人と交流したい」というものだった。交流の目的は「資格取得など同じ目標を持つ人と情報交換をしたい」、「職場以外にも知り合いが欲しい」、「仲間がいればより勉強に集中できそう」と人によって異なってはいたが、勉強や好きなことを通してできた仲間と気持ちを共有することを重要視していた。

5.まとめ

 年齢も職業も異なる人たちがひとつの場所に集まり、その場をより良い場所にするため働きかけている。そして勉強を通し人から刺激を受け、生活を充実させるきっかけをもたらす勉強カフェは新たなコミュニティの生まれる場と言えるのではないだろうか。

(表1)定期的に行われている勉強会の例
(表2)利用者の滞在時間
(図1)利用者の過ごし方の推移(グラフ)
(図2)店内の過ごし方の場面



2003-2015, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2015-01-25更新