卒業研究要旨(2014年度)

カフェ風インテリアにみる新たなライフスタイル

2014年度卒業研究 空間デザイン研究室 河野里紗

1.はじめに

 最近、調味料やグラスがディスプレイとして収納されていたり、メニューが書かれた黒板があったりと、カフェをイメージさせるカフェ風インテリアが注目されているのを感じる。この研究では、カフェ風インテリアの要素や誕生の背景を明らかにし、そこから新たなライフスタイルを見出すことを目的とする。

2.調査方法

 文献調査として、インテリア雑誌、ライフスタイル誌からカフェ風インテリアの要素やスタイルの収集・整理を行った。インテリア雑誌では、16年分の目次ページからインテリアスタイルの流れや変化を読み取り、カフェ風インテリア誕生・確立の背景を調査した。また、インテリアSNSアプリRoomClipにて、カフェ風インテリアを行っている4名の方にヒアリング調査を実施した。

3.カフェ風インテリア成立の流れ

 1999年〜2014年の目次ページから、1年ごとにスタイルと要素を抜き取り、特徴や傾向を考察した。その結果、インテリアスタイルの流れは、4つのキーワードによって変化していることが読み取れた。

(1)古いものを大切にする価値観(2000年〜)

 長く使える家具を選ぶことや、手持ちの家具をDIYするようになる。欧州のライフスタイルが注目される。

(2)一手間かけて暮らしを楽しむ付加価値(2004年〜)

 自宅時間をより良いものにしようとインテリアを楽しむことを基準にした家づくりをするようになる。DIYの多様化やディスプレイに力を入れるようになる。

(3)キッチンに対する考え方の変化(2008年〜)

 リビングとしてのキッチンという考え方が生まれる。カフェ風インテリア誕生のきっかけとなる。

(4)人が集まる家を作りたいという考え方(2011年〜)

 人を招くことや、おもてなしスタイルが注目され、カフェ風インテリアがスタイルとして確立する。

 キッチンをリビングとしてくつろげる空間にしようとする考え方に、自分で手を加えて環境をつくるDIY的な価値観。また、他人を招いたり他人に見せたりなどの自宅をシェアしようとする価値観。これらが取り入れられ、カフェ風なスタイルが生まれたのではないかと考える。

4.カフェ風インテリアの要素

 文献調査やヒアリングから得られたカフェ風インテリアの物理的要素や価値観に関わる要素を表1のように整理した。そこでの人のふるまいとしては、キッチンを中心にカフェのようにくつろげることと、他人をもてなしたり、コミュニケーションをしたりすることを目指した空間づくりが行われている。その空間のしつらえ方としては、人に対して魅せるための要素が用いられている。それは、既製品ではなく自分の手を加えてつくる手法になっている。
 カフェ風インテリアは、自分の手で作り上げたプライベートな空間であると同時に、外に開くというパブリック性を合わせ持ったインテリア空間になっていることがうかがえる。

5.カフェ風インテリア実践者の意識

 キッチンを孤立させないことや、量より質でコーディネートをすることがこだわりの点であった。生活の変化では、家にいる時間が増え、愛着が増したことや、来客が多くなったことが挙げられた。

6.まとめ

 カフェ風インテリアは、単にカフェ好きな人の自己満足にとどまるものではない。既製品や業者に任せるのではなく、自分でつくるというライフスタイルや、家族だけの閉鎖的な家ではなく、外に開くというライフスタイルが反映されたインテリアである。

(図1)カフェ風インテリアイメージ画像
(表1)カフェ風インテリア要素


(参考文献一覧)
インテリア雑誌...「Plus1living」1999 年6月 No. 1〜 2004 年 2 月 No.86
ライフスタイル誌... ( インテリア・カフェ風に関するものを選出 )...「MAISHA」2012 年1月 No. 1〜 2014 年 1 月 No.13、「an・an」2007 年 10 月〜 2014 年 10 月、「Hanako」2010 年4月 No.969・2011 年 4 月 No.993、「OZ magazine」、2008 年5月〜 2013 年 1 月、「アンドプレミアム」2014 年 No.1 〜 No.8、「ku;nel」2007 年 11 月 No.29 〜 2013 年 7 月 No.63
インテリアムック本...「カフェみたいな暮らしを楽しむ本」株式会社学研パブリッシング



2003-2015, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2015-01-25更新