SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2014年度卒業研究 空間デザイン研究室 奥脇 楓
地方都市には機能を失い閑散としてしまった商店街や主をなくした空き家などもったいないと感じるスペース(すきま)が多く見られる。商店街のようなかつて人のつながりを生み地域の生活の拠点・風景の一部であったような場が無くなり、その結果、家の一歩外にはすぐ「公」が迫ってきた。「人が入り込む余地」を残さないまちの中に、家以外の場に居やすいと感じる場所は少ないのではないだろうか。
そして現代、人々は便利さや時間を気にする生活ゆえに心にゆとりをもてない、すきまのない生活を送っているように感じる。一方で高齢者のように家以外の場での活動が減ってしまうと、いくら時間があっても生活は限られたものとなってしまう。そういった生活では人と人、人とまちとの関わりも希薄してしまう一方である。普段見落としがちになっているすきまを、まちの人同士がつながることのできる場・時間、日常の一部に人との関わり合いを感じられるすきまとして生み出したい。
山梨県富士吉田市下吉田西裏地区周辺(2ヶ所)
周辺は住宅地に囲まれており、幼稚園・保育園から小・中・高等学校まで様々な教育施設が点在している。1かつて織物産業が栄えた時代、宿泊・娯楽の場として歓楽街が形成された場所。今では住宅と店舗(住宅も兼ねる)がおり混ざる形で建ち並んでいるが、空き家が目立ち閑散としてしまっている。2長屋風の建物が並んでおり、実際にも空き家の改装がなされている。人通りのある国道に対する開きがなくひっそりした雰囲気。
まちの中の空間としてのすきま・人々の生活のすきまに目を向け、それぞれ特徴をもった空間を生み出す。親しみやすい空間として庭の延長のような感覚でまちに溶け込んでいく。人の居る光景が生活の一部として広がることでまちへの興味、人への興味をもつきっかけになり、自分もまちに出てみようという気持ちが生まれ、家以外の場に楽しみや安心といったものを見つけられる。空間的に価値を失った場所が、生活にすきまをもたらす新たな地域の拠点となる。
"まるで小さなころ帰り道に道草をした思い出のように、
いつのまにかまちの中に入り込み、
自分のお気に入りの場所を見つけている。
もう一回まちで道草しよう。ーMACHIKUSA"
路地の形を残し、人の流れを引き込む。自分のお店や教室を開いてみたいと思っていた人などが気軽に挑戦することが出来る空間と住空間を存在させることで、住民同士に収まらない関係、自然な出会いが生まれる。路地入口部分にはオープンスペースのような空間がありどんな人でも入りやすい。小さなスケールで組み合わせることで周囲の環境にも馴染ませ、建物間に生まれたすきま(通り道)や開きに人の流れや溜まりが生まれ、居合わせた人々の交流の場となる。
国道に面した部分に敷地内へ視線の抜けを作り興味を抱かせる。奥に一歩、踏み込むと石畳に木目の建物、その先の広々とした縁側には陽があたり暖かそうで腰掛けたくなる。四季が感じられる庭は誰が手入れしているのか思わず想像したくなる。まるで誰かの家のようなのに、自分の家であるかのように思い思いくつろぐ姿に自分の気持ちも和らいでいく。入ってきた人の足を引き止め、時間を忘れ居座ってしまうような、どこか懐かしさを感じさせてくれる空間。
(図1)対象敷地
(図2)対象地1イメージ
(図3)対象地2イメージ
2003-2015, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2015-01-25更新