卒業研究要旨(2014年度)

街の屋根

2014年度卒業研究 空間デザイン研究室 田形真弓

1.研究目的・背景

 外部空間に私たちが気軽に居られる空間はどれくらいあるのだろう。
 まちの外での生活を豊かにしてくれる可能性を秘めていると考える外部空間を、そこに住む人やそこに訪れる人、また街のためにもっと活用できないだろうか。そのまちらしさを活かしつつ、この地域に住む人々や周辺から訪れる人々が、ここで出会い集える居場所となる空間をまちの中に提案することで、そのまちに住む価値や魅力を再発見し、人と人との関わりの中でつながっていくまちづくりのきっかけを「居場所」と呼べる外部空間づくりを通して提案する。
 どんな人がいて、これからどんな街にしたいのか、動き出すきっかけは、集い、交流が促される環境があって始まっていくのではないか。

2.対象敷地概要

対象地:静岡県静岡市葵区七間町
敷地面積:6142.2m2
 映画館跡地を対象とする。七間町名店街と呼ばれる、古い歴史をもち、落ち着いた風格のある商店街の西側に位置し、かつては映画街として市民に親しまれ、映画館と共に歩んできた街であったが、新設する大型ショッピングセンターへの移転に伴い4館9スクリーンが平成21年に閉館し、映画街は姿を消してしまった。それ以降人通りが減少してしまい、現在はこの地域に再び活気を取り戻そうと、新たなまちづくりの方向性を探りながら計画が進んでいる。

3.計画

3-1コンセプト

・屋根から生まれる居場所
十字路の通った4つの敷地を大きな屋根をかけて覆う。屋根は4つの敷地につながりを生み、人々の居場所をつくる。包み込むようなかたちをした屋根の下には、人々が顔を合わせながら思い思いに過ごす「街の居場所」のような空間が広がる。

・映画の街、再び
 この街には映画街であった過去を語り継ぎたい気持ちがある。映画は街の特色として受け継いでいきたい。映画館というかたちではなくとも、気軽に映画や映像を楽しめる場があれば、映画でつながるコミュニケーションはこれからも続いていける。

・思い思いに過ごす
 好きな場所で様々な人と映画を見たり街でイベントを開催したりと皆で集まって過ごせる場所もあれば、本を読んだり花を愛でたりと一人でゆったり過ごせる場所もある。気分や用途によって使い方を自由に選び、一人一人がお気に入りの居場所を見つけることが出来る。

3-2デザイン

 三角形を4つ繋げたかたちで屋根を2つつくり、敷地を覆うように配置する。その屋根にあわせて8階建て分の床を敷き詰め、用途や外とのつながりによって床を削り、空間をつくっていく。屋根の部分はガラスを組み合わせて、街を見渡したり日の当たる心地よい空間をつくりだしたりする。わざとずらした床は視線の動きをつくり、他にも見上げたり、のぞいたり、空間を楽しむ要素を盛り込む。屋根は映像を映すスクリーンとしても活用できる。

(図1)対象敷地周辺
(図2)敷地模型写真



2003-2015, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2015-01-25更新