卒業研究要旨(2015年度)

西国分寺 まちあい駅

2015年度卒業研究 空間デザイン研究室 秋葉早紀

1.はじめに

 駅前にはビルや多くのお店が建ち並び、多くの人が訪れる活気ある場所のイメージが強い。西国分寺駅は駅と街の繋がりが薄く、ここには何もないと思う利用者は多くいる。人々の生活から何か感じることはないのだろうか。経済性や効率性を重点とした駅前のあり方を見直し、これからはどんな生活して行けば良いのだろうか。人が集まる場所だからこそ、考えを表現・共有できる場所なのではないかと感じる。

2.敷地概要

対象敷地:西国分寺駅と駅東側周辺(東京都国分寺市)

敷地面積:約26000m2

駅状況:西国分寺駅の1日平均乗車人数は28,396人(2014年度)。武蔵野線と中央線の乗りかえができ、交通が便利な駅である。乗り換え駅であるため、改札を通る人は少なく、降りたらすぐに走る人の姿が多く見られる。

周辺状況:周辺は住宅地で、少し歩くと、緑豊かな都立武蔵野公園、お鷹の道・真姿の池湧水群が広がる。また、地元野菜がとれる地域で、無人野菜スタンドも多い。住民が声をかけあい、家の前で立ち話をする風景や、公園を利用した過ごし方が見られる。現在の問題:駅に東口がないが、作る事を前提に作った交通広場があり、現在は駐輪場に使われている。また、駅の南側には1500戸の集合住宅があるが、駅までの道幅が狭く非常に危ない。

このような問題を解決するために新たに東口を設け、乗り換えから生まれる街との交流の場を提案する。この場所は、交通広場への動線を配慮し、「借り家」を空間として設け、街の魅力を引き出す新たな拠点の場となる。ホームから見えるこの街の景色が広がり、駅と街の可能性を広げる。

3.計画

3-1 コンセプト

・待ち合い駅待ち合い駅としてのあり方を見直す。待っている間に街の姿が目に飛びこみ、普段当たり前に流れていて、気がつきにくい生活の重要性を考える時間にする。

・街会い駅の利用者が、駅・街を知り触れ合うことで、愛着が生まれる。そして、いつかこの街に住みたい、自分のことも知ってもらいたい、お互いを共有したいと思ってもらうきっかけとなる。

・街愛駅周辺で暮らす人々に新しい事を始めたくなる、自分の考えを表現できる空間。駅の利用者に自分の生活を表現することで、暮らしているこの街・生活を改めて感じる事が出来き、愛着が増える。

3-2 デザイン

 街が駅にはみ出し、多くの人が街へと流れ込む。人の思いを丸の形で表現し、それが街へとなだれ込むような流れを屋根の形にした。駅の乗り換え、街の地域の広がりを動線で考え、ホームからのスロープを配置する。動線が交差したり、重なることで、街への出会い、きっかけを作る。土地の高低差を利用したスロープの変化に、街の魅力を組み込んでいき、視線の変化でも街の見方も変わる。「借り家」の屋根は、部屋の屋根としてあるだけでなく、スロープの一部ともなる。

3-3 ストーリー

 街はみんなのもの。街を共有しながらみんな生活している。駅もその一部であり、街かもしれない。土地も家も場所も誰のものではない、いつかまた違う人がここで生活をし、受け継がれていく記憶や思いがある。ここでは「借り家」が、人々の生活に空間を与え、駅と街との境界をなくす。家の庭が、街の一部の風景であるように、どんな生活も街の魅力となる。多くの人が利用する駅だからこそ自分の思いを多くの人に表現し、刺激し高めあう場所とする。

(図1)対象敷地
(図2)敷地模型写真



2003-2016, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2016-02-05更新