卒業研究要旨(2015年度)

人と海をツナグ

2015年度卒業研究 空間デザイン研究室 木村風香

1.はじめに

 日々の生活の中で、人々は自然について考える時間をどれだけ持っているだろうか。街の変化、食の変化、文化の変化、テクノロジーの発展…様々な面で進化し続ける現代で、忘れてはいけないこと、考えるべきこと、感じるべきことがあるのではないだろうか。この研究は、自身の海での体験や経験を通して感じた想いをもとに、“人と海を繋ぐ”をテーマとし取り組んだ制作である。現在の海の姿をリアルに感じ取ってもらい、自発的に問題意識を持ち、環境への見方や接し方に変化を与えることを期待する。

2.敷地概要

対象敷地:東京都 新島 間々下海岸 海洋周辺
周辺状況:
[新島]
 離島ブーム時代賑わいをみせた新島。現在は音楽フェスが年に一度ビーチで開催されているが、島全体の雰囲気は落ち着き、ゆったりとした時間が流れている。間々下海岸周辺は波も穏やかで海水浴場としても観光客や地元民が訪れる場所。 [鳥ヶ島]
 新島港のすぐ近く、引潮時には道ができ上陸も可能な島。規模はとても小さく、直径は約90m。島周りの岩壁にはところどころサンゴが生息し、周辺の魚影も濃い。鳥ヶ島周辺の深度は-2~5mと浅く、外洋側に進むと-10m~-20mになる。

3.計画提案

 コンセプト海の環境問題に対して関心のない人、裏側まで見ることのなかった人、チャレンジに一歩が踏み出せなかった人、もっと海を知りたい!という人などに、リアルな海の姿を、外側と内側、両面から体感してもらい、環境意識を持ってもらうことが狙い。

【Coralwood】島を囲むウッドデッキ。人々が思い思いの時間を過ごし、気持ちをリセットする場所。心にスキマができ、余裕が生まれる。

【Searoad】360°海に囲まれた空間で呼吸をする、魚が頭上を通り過ぎる、見たことのない色や光、味わったことのない感覚を体感し、海の生き物を身近に感じはじめる。

【Coralcafe】海の雑貨、本などが揃った半海中カフェ。

【Anemoneroad】アネモネの花が由来でもあるイソギンチャクをモチーフに、自分がまるでクマノミにでもなったかのような錯覚に陥るアネモネロード。

【Nest】魚が天敵から逃げる時、ご飯を食べる時、お昼寝する時に入り込む巣のような空間をfishスケールで再現。

【Pain】この建築で唯一”負”の部分を表現したゾーン。視界は悪く不安定な足場に、少しの恐怖を感じる。海で暮らす生き物が感じている痛みや恐怖を、直接的、間接的にアートも折り込み表現している。

【SenseIsland】こうしたゾーンを通りたどり着くメインホール。生物をじっくり観察、触れ合いができるコーナーや、アートコーナー、浜辺のガラクタ宝探し、そしてサンゴの苗づくり、そのサンゴを海中に植えに行く体験ダイビングコーナー。周辺に広がるサンゴのどれかが、あなたの植えたサンゴかもしれない。

4.デザイン

 水を表す正20面体でできた道。その途中途中にはお魚スケールでつくられたイソギンチャクゾーン、お昼寝や隠れ家になるサンゴのような空間などが現れる。メインホールは、ワークショップや、釣り、体験ダイビングなどができ、全体は島を基盤に根をはった、まるでひとつの生き物であるかのような外観。

(図1)対象敷地平面図
(図2)鳥ヶ島周辺制作イメージ図



2003-2016, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2016-02-05更新