卒業研究要旨(2015年度)

渋谷キャンパスにおける行動調査

2015年度卒業研究 空間デザイン研究室 真木利佳子

1.はじめに

 実践女子大学渋谷キャンパスは2014年にオープンした高層の建物で、中央の大きな吹抜けに面して見通しのよい様々な居場所がつくられている。しかし学生は必ずしも想定した利用の仕方、過ごし方をしているわけではない。本研究では実践女子大学渋谷キャンパスが学生にどのような使われ方をしているのかを調査し、各空間の特徴を考察していく。

2.調査概要

 調査は12月中の5日間、各日8時半〜18時半まで行った。渋谷キャンパスの1階〜10階において、学生が自由に出入り使用できる場所を対象にして、1時間おきに学生の過ごし方を観察・記録した。

3.フロアごとの特徴

(1)1階:
 プラザは朝から夕方まで比較的コンスタントに利用されており、長時間の滞在よりも、短時間で入れ替わりながら使用されているようである。昼時を中心に複数での使用も見られるが、全体としては一人での利用が多く、スマホや睡眠行為が他フロアよりも目立つ。ソファー席とテーブル席に分けてみると、テーブル席では勉強が多いのに対してソファー席ではスマホや睡眠が圧倒的に多い。ソファー席では、スマホをしている際も寝そべった姿勢であることが多い。

(2)4〜8階:
 授業開始前や終了後に利用する人が多く、長時間での利用はそれほど多くない。勉強やパソコン使用が他の階より多い。個人での利用もあるが、話しながら勉強したりグループで食事をしたりと複数での利用が多い。空き教室はグループでDVD鑑賞や大人数での会話として使われ、教室に挟まれたラウンジ席はスマホ、勉強などが多い。また4ヵ所のラウンジを比較したところ、吹抜けから見える場所と見えない場所で特に大きな違いは見られなかった。

(3)9階:
 カフェテリアは当然ながら昼時にピークがあり、フロア全体で200人以上の学生で賑わう。昼を過ぎると激減するが、それでも夕方まで30〜50人程度が滞在している。昼時を除くと、一人ではスマホ、複数では会話をする人が多い。コンビニ横のホールでは、昼から夕方にかけてはテーブル席での会話が多いが、朝と夕方以降は窓際の席に一人でいる割合が高くなる。

(4)10階:
 複数の利用が比較的に多い。昼時は9階から食事を持って上がる人で賑わう。他の時間帯では、勉強、パソコンなどの他、ギターやダンスなど多様な行為が見られる。屋上庭園側と学生団体室側のに分けてみると、庭園側では夕方にはほとんど利用がなくなるのに対し、学生団体室側はサークルの用事で集まるグループも多く、18時以降も使用されている。

4.考察・まとめ

 場所によって使われ方、過ごし方には特徴が見られ、学生はその時々の行為や人数によって場所を選択しているようである。ただし、どのフロア、どの場所でも、とにかくスマホの使用が目立つ。また、他者の視線を意識した使い分けよりも、次の授業の教室の位置など、利便性を優先する傾向が強いように思われる。1階はパブリックな場所として多くの人の出入りがある場所にもかかわらず、睡眠・寝そべり行為などプライベートな行為が最も目立っている。学生にとって、パブリックな空間という意識が異なっている可能性がある。今後さらに考察を深めていく。

(表1)調査対象場所
 1階:プラザ(61席)
 4〜8階:講義室(3〜6カ所/階)、ラウンジ(2〜4カ所、24〜36席/階)
 9階:カフェテリア(380席)、ホール(72席)
 10階:スカイラウンジ(88席)
(図1)1階平面図
(図2)7階平面図
(図3)フロアごとの利用者数一日分の合計(食堂は12時を除く)(グラフ)



2003-2016, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2016-02-05更新