卒業研究要旨(2015年度)

店との関わりが広げる下北沢の生活

2015年度卒業研究 空間デザイン研究室 小笠原千紗

1.はじめに

 下北沢は狭く入り組んだ路地が多く、独特な文化や個性ある商店、新旧入り交じる商店などが存在し、ごちゃごちゃ感のある街である。現在は再開発が計画され、シモキタらしさを破壊するものとして反対運動が起きたが、着々と実施され、駅周辺の様子も大きく変わってきている。それに伴って外からのイメージや評価も変わってきているが、実際の日常生活に変化はあったのだろうか。本研究では下北沢の店と住人と街の関係性を考え、それぞれが支え合い生まれる魅力を明らかにしたい。

2.研究方法

 11月12日〜12月20日にかけて下北沢の住人計20人(社会人5人、店員8人、専業主婦3人、学生1人、無職3人)に下北沢での生活について聞き取り調査を実施した。実施して、一人一人の地域の生活の様子をまとめ、図に示した(図1)。得られたコメントから店と住人と街の関わりについてまとめ分析した。

3.店との関わりの特徴

3-1.店のついで利用

 店をついでに利用する人が多かった。一つの目的に対して様々な店に立ち寄り、帰り道の途中にあるから、気軽に立寄れる店があるから、せっかくだから、どこかで休みたいから、気になる店があるから、店主と会いたいから、といった理由でついで利用をしていた。

3-2.店を介したコミュニケーション

 店におけるコミュニケーションが盛んだった。昔からある地域に根付いている店だけではなく、新しくできた店でもコミュニケーションがとれていた。年齢の離れた人同士や店主と客、店主同士が交流を持っていた。店での付き合いが街に広がり、知り合いの連鎖がおこっていた。見守りのある街であり、また、過去の交流もつなげられていた。新しく来た人やよそ者を遠ざけることなく気軽に交流できるなど、誰でも受け入れてくれる街であった。

3-3.街の変化に対する意識

 再開発による日常生活の変化を感じていない人が多かった。変化する街に対して、変わることを当たり前に受け入れ、新しい店を探したり、他の店にふらっと寄るなど新しい関係を築けている。

4.まとめ

 下北沢にはついでに寄る店や関わりが持てる店があり、そんな店が誰でも受け入れられ、様々な関わりをもてる街を作っている。また、そういった店との関わりが柔軟で軽やかな生活の楽しさや、街と関わりつつ作られる自分ならではの生活の形を支えている。店によって作られ支えられる住人の生活スタイルと街の役割・豊かさは互いに支え合うことで、変化によって崩壊することなく、変わりつつも維持される柔軟なものになっている(図2)。

(図1)Aさんの行動マップ
50代女性/専業主婦/4人家族スーパーやドラッグストアをよく利用し、その行き帰りについでに他の店に寄っていく。下北沢で育ったため昔からの知り合いの店主が多く、たまに会いにいく。また新しくできたカフェやパン屋の店主とも店内で交流がある。利用していた店が潰れてしまっても新たな店で関係を作っていけている特徴がある。

(図2)店との関わりが広げる生活スタイルと街の魅力



2003-2016, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2016-02-05更新