SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2016年度卒業研究 空間デザイン研究室 阿部政寿美、櫻井花菜
現代は、かつて地域に豊かにあった「居場所」が少ないことが問題視され、中高生のための「居場所」づくりが注目されている。本研究では、そうした居場所づくりを目指す青少年施設を対象に、居場所としての特徴や中高生にとっての居場所の意味を明らかにする。
表2の2ヵ所の青少年施設を対象とした。両者は規模が違うが、いずれも無料で長時間利用でき、様々な設備が整っている為、自由に過ごすことが出来る。また、スタッフが常駐して様々なイベントを行っている。利用実態や施設に対する意識を知るために表1の調査を行った。
両施設とも半数以上の中高生たちが週1.2〜月2.3回施設に訪れていた。ロビーと体育室の利用が特に多く、ロビーでは1人またはグループで自由に集い、体育室では運動を行う。その時の気分や状況で自由に居場所を選択していた。常駐するスタッフに相談や一緒に運動を楽しんでいる様子も見られた。両者共通して、「入りやすさ・多様な空間」「話を聞いてくれるスタッフや他者との交流」「安心して自由に過ごせる時間」があることで、中高生の居場所を作っていた。
両施設の居場所の性質は【空間・人間・時間】の要素から、やや異なるものとなった（表3）。
Y施設は、中高生同士でスポーツを通じて他者と繋がり、共通の趣味や価値観を持った友達が出来ている。 「交流関係が広がった」「人と関わる機会ができる」ことが魅力として挙げられていた（図1）。スタッフは中高生からやや距離を置き、中高生による主体的な関わりを重視している。B施設は、カフェのように一人で気軽に来られ、入り口ではスタッフが迎えてくれる。
「ふらっと出掛ける場所」「誰の目にも気にせずいられる場所」が魅力として挙げられた(図1）。スタッフは中高生に近い存在であり、相談しやすい「ナナメの関係」であることを重視している。Y施設は「活動を通し社会を学び、施設が社会への通過点」となっており、B施設は「社会から距離を置き、自分の存在を確かめる場所」が目指されていた。同じ「居場所」であっても、Y施設は家や学校と異なる「社会的居場所」、B施設は家や学校から離れて「個人的居場所」と言え、それぞれ異なる居場所の役割を担っていることが分かった。
2つの施設は家や学校では得にくい【空間・人間・時間】を中高生に提供する「居場所」となっていた。その役割は「社会的居場所」と「個人的居場所」に分類出来た。いずれも思春期にある中高生にとって重要な役割と言える。地域により多様な「居場所」があることで、中高生たちの選択肢を増やすことが出来るだろう。
（表1）調査方法
1．行動観察調査：（14:00~19:00）場所・行為・他者との関わりを15分置きに記録
2．ヒアリング調査：中高生とスタッフに聞き込み実態を把握。
3．アンケート調査：（Y施設73人/B施設32人）利用目的や求める施設像を知るアンケートを配布。
（表2）対象施設概要
Y施設（1997年設立）
延べ床面積：2.895.71m2 運営:区直営 スタッフ：巡回と一部滞在 利用男女比：7:3
一部利用登録が必要。メインスペースはオープンで机が固定。人数に合わせて机を選択する。複数人で使えるテーブルのみ。体育室は予約なしで使えるスペースと時間交代のスペースがあり、大人数が一気に遊ぶ事ができる。屋内なので天候を気にせず遊べる。
B施設（2015年設立）
延べ床面積：781.22m2 運営：事業委託による運営 スタッフ：ワンフロアのみ滞在 利用男女比：5:5
全施設登録が必要。メインスペースは可動式机で、机を人数に合わせて作る。窓際にはカウンタースペースもあり、一人で利用しやすい。運動室は時間交代の予約制で、空いてれば何度も利用できるが、一団体しか遊べない。屋外にある為天候・騒音によって制限される。
（図1）中高生のアンケートに見る施設の魅力（グラフ）
（表3）施設の特徴
Y施設
空間：施設が大きく居場所の選択肢が多い
人間：スタッフと中高生は少し距離を置く、指導者的立場
中高生主体のイベント多い中高生同士の交流
時間：スポーツ・趣味を通し仲間づくり、好きな活動
B施設
空間：行く人数に合わせて居場所を作れる
人間：スタッフと中高生の距離が近いナナメの関係、親しみやすく相談しやすい
スタッフ主体のイベント多い
時間：1人でふらっと来れる、落ち着いて過ごせる
他人の目を気にせず自由に居られる
2003-2017, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2017-01-21更新